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店主は動揺し、どこか悲し気な顔をする。
それは…なぜかリヴァイと重なって見えた。
だが、店主はすぐに笑顔を繕って、
「…あははっ。
分かってましたけど、失恋してしまいました。」
「……え?」
「あ、これ、Aさんには秘密ですよ!」
─店主は人指し指を口元にあてる。
その姿を見て、どこかAに似ていると思った。
無理をして、笑顔を繕うところだろうか。
「…どういうことだい?」
「……前に、ブーゲンビリアの花言葉をお教えしたのを憶えていらっしゃいますか?」
「あぁ…。」
「花には、全ての花に花言葉があります。
…その栞の花は梅花黄蓮というんですが、梅花黄蓮にも意味があるんですよ。」
「…どんな花言葉なんだ?」
「梅花黄蓮の花言葉は…『二度目の恋』、です。」
「……は…?」
─にっこりと微笑む店主。
その言葉とその姿を見て、立ちつくした。
一気に頭の中が掻き乱されたような。
二度目の…恋?
それが、梅花黄蓮の花言葉?
なぜ、それを私は渡されたんだ?
「Aさんがその栞を渡したのは、その花言葉のまま…あなたが二度目の恋をした相手だったのではないでしょうか?」
「……ッ……。」
その瞬間、思い出した。
あの日、Aと交わした言葉。
「…どんな人だ?」
『その好きな人?』
「…あぁ。」
『どんな…かぁ。』
─そしてAは溜息をついて、続けた。
『…鈍い、かなぁ。』
「はははっ…他には?」
『寡黙で、無口、無表情?』
「…分かりにくいんだな。」
『ふっ、あはははっ!』
─呆然として、記憶はまた流れる。
あの日、私が繰り返し思い出した言葉。
それは…自分から問いかけた言葉だったのに。
『リヴァイのことは…好きだったよ。』
…好き、だった?
「……好き、だった?」
「…どうかしたんですか?」
「………。
だった、というのは…過去形だな。」
「そうですね…?」
店主に問いかけ、自分にも問いかけた。
何度も、何度も、確かめるように。
確かにAは…『好きだった』と。
つまり、Aがリヴァイを好きだった過去があって、その上で私はこの花を渡されたということか?
遠回しにフラれたと思ったのは…勘違い、か?
「…Aさんにその栞を渡した時のこと、少しお話してもいいですか?」
「……え……?」
─私が遅れて頷くと、店主は困ったように笑って、手元の梅花黄蓮を見つめながら話した。
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氷飴(プロフ) - レンさん» コメントありがとうございます!(今私も調べてきたのですが、レンさんのおっしゃる通り“独占欲“って出てきました(ºωº`*))このお話を書いた時も調べていたつもりだったのですが、なぜか“執着”に……。教えていただきありがとうございます!(*´ω`*) (2020年4月25日 19時) (レス) id: 9625751614 (このIDを非表示/違反報告)
レン(プロフ) - ネックレスって独占欲っていう意味持ってるんですよ! (2020年4月25日 19時) (レス) id: 784374d164 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - にんじんさん» 一応、両想いになった後の続きも作りたいと思っているのですが…まだ考えがまとまっていない最中だったりします(´・ω・`) (2017年12月11日 12時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - この物語はこれで終わりですか?(´・ω・`) (2017年12月10日 23時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
氷飴(プロフ) - 京 鏡さん» そっ、そんな風に言ってもらえるなんて…思ってもみなかったよ!とても嬉しいッ!ありがとう!!頑張ります!!((o(*>ω<*)o)) (2017年11月3日 19時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:氷飴 | 作成日時:2017年11月3日 19時