山田くんはこっちを向かない。 (ページ19)

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圭人「……んー、やっぱ先生いない」

保健室にきたはいいものの、
保健医の先生がいなくて

恐る恐る私はベッドに座った。

圭人「保冷剤、はい」

ハンカチにくるまった保冷剤を、
岡本くんは私の手の上に丁寧に置いてくれた。

A「……ありがとう」

圭人「ううん、

よいしょっと」

保冷剤を目に当てていると、
岡本くんも隣にドスッと腰掛けた。

圭人「…あ、変なことしないから安心して！」

A「……変なこと？」

何のことだろう

よく分からないと首をかしげていると、
岡本くんは耳を赤くして

圭人「……やっぱ、なんでもない」

A「…なにそれ笑」

優しく目に当てていると、
ガラッとドアが開いて先生かと思い2人して立ち上がった。

A「……あ」

涼介「大丈夫かよ」

山田くんだった。

なんで？授業は始まってるはずなのに。

圭人「山ちゃん、授業は」

涼介「別に

ん」

山田くんの手から私の手に
ポンッと投げられたそれ。

冷たい感覚と、山田くんらしくないそれと、

ビックリして彼の顔を見た。

涼介「んだよ」

A「あっ、いや

…………ありがとう」

私の手の中にあるスポーツドリンク、
少しだけ、少しだけだけど。

山田くんの首筋に汗が伝っているから、
走って買ってきてくれたのかな、

なんて、

圭人「ふふ、ね？
優しいでしょ山ちゃん」

隣で顔をのぞきこむ岡本くんに、
うん、と頷いた。

涼介「なんだよ、心配してやってんのに」

A「え？

褒めてるんだよ？」

涼介「うるせんだよバカ」

今日は一段と口が悪いな。

けど、一段と優しいな。

A「………七瀬、何か言ってた？」

恐る恐る、
山田くんの目を見て聞いてみた。

七瀬が、
あのあとどうしたのか。

涼介「……何か、言わないわけないんじゃね？

…ブツブツ言ってんのは聞こえたけど
詳しいことは俺もわかんねえ」

…………七瀬、怒ってるだろうな。

これからどうなるのかを考えると、
少しだけ身震いした。