貴方の隣で。《紫》 (ページ14)

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『私の、兄、ですか』

｢ああそうだ。照史くんは優秀な生徒だったよ。
真面目で、社会貢献活動にも積極的に参加していたし、友達も多くて顔が広い。
先輩からも後輩からも好かれるような、皆から1目置かれる存在だった。｣

『そうです。私は、兄のそういう姿をずっと見てきました。』

｢勿論僕も怪しんだりなんかしなかった。だけどね、きっかけは彼自身なんだ。きっと、表向きの芝居をするのに疲れ始めていたんだろうね。｣

『兄は妹である私にも芝居をしていたのでしょうか』

｢照史くんは、妹が大切だから少し距離を置くことで守っている、と言っていた。
裏の顔を見せることで、何かの歯止めが効かなくなってしまう、なんて事を避けたかったんだよ、彼は。｣

『本当に、隠すのが上手い人間なのですね。』

｢そして君はいつも冷静だね。｣

教授の顔を見ると、少し笑っていた。

まるで私には感情が無いと言うように、

まるで私は人間じゃ無いと言うように。

しかしそれならば教授自身も同じだ。

私達は何処までも同じなのだ。

｢彼は、当時起きていたバラバラ殺人について熱く語っていたよ。それはもう、とても楽しそうに。｣

『そうですか。安心しました。やはり私と兄は血が繋がっているのですね。』

｢自分と違いすぎて居て不安だったりしましたか？｣

『不安ではありませんでした。ただ、嫉妬していました。兄は普通、の中に馴染んでいたから。私はそれが羨ましかったのです。』

｢そうですか。｣

教授は珈琲の香りに

目を瞑りながら浸り、

ゆっくりとマグカップに口を付けた。

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