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016.彼シャツ ページ16





「ごめんなさい」




顔を洗い頭が冷えたのか、

寝癖まみれの髪の毛を後ろにたばね、勢いよくお辞儀するのは

人気声優であり、モデル界隈でも人気のあるカリスマとも呼ばれる

小宮Aだとは誰も思わないだろう。





当然だけど、人は誰しも裏がある
その“裏”が必ず“悪”という訳でもない。




解釈は人それぞれだ。



ただ、事務所の圧に耐えて耐えて
相応の報酬を貰えないにしろ



仕事を懸命に駆け抜けている彼女は



何事にも真っ直ぐで、素直だ。






増田「全然いーって。まじで。ほんとに。」

「ベッドも……」

増田「俺ん家のソファー案外寝やすいらしいんよ、快眠だったよ?俺は。」






それに増田自身、気にも留めていない






増田「宅飲み誘ったんは俺やしな」

「……あのさ」

増田「ん?」

「お風呂借りてもいい……ですか」

増田「シャワーでいーならどーぞ?笑」






それに気づいたのか、Aも肩を下ろした。






まるでコレは昔のふたりのようだった。






浴室に足を向けて歩き出すAをキッチンからジーッと見続ける増田はふとあることを思い出す





増田「てかさ、服あんの?」

「これ着て帰る」

増田「いややめな?さすがによくねーからおれの着なよ」





クローゼットのハンガーにかかったスウェットを取り出し、彼女に軽く投げる





『ナイスキャッチ〜』と謎にはしゃぐ増田はどこかおかしく、面白い。




「はは、ありがとう」




そう素直につたえたAに増田は照れくさそうに『ん。』とだけ応えた。









____2人の距離が縮まるまであと

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作者名:にむ | 作成日時:2021年9月8日 13時

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