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冬の足音は確実に近づいてきていた。

山から吹いてくる風が私の動きを遅くする。



起きる時間が夏場より30分遅くなった。


今まで余裕だった登校も、少しばかり急がなくちゃいけない。


学校に遅刻するのだけはごめんだ。





岩泉とは昇降口でたまに顔を合わせるぐらいだったが、私がのろまなのか はたまた彼が早すぎるのか。



最近は一度も会っていない。





あの日、一言『ありがとう』とだけ送ってから。


君からのメッセージは来ないし、顔を見かけることもなくなった。





この季節、彼は何かと忙しいんだろうけれど なんだか話を先延ばしにされてる気がする。




……避けていたのは、私の方なのかもしれないのに。



そんなことを考えながら、私は自転車のペダルを思い切り踏んだ。


坂道に差しかかると、急にスピードが上がって面白いくらいに風を切っていく。




私はこの風が好きだった。


どんなに辛くても 学校に行きたくなくても、この風はいつだって私の背中を押してくれる。




人気のない道路で、ひとつ溜め息を溢した。



「もっと早く、気づいてりゃよかった」




及川に吐いた言葉と同じものを、君に言おうとしている私が居る。




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作者名:ヰ都 | 作成日時:2017年9月30日 22時

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