*三話 ページ4
こうなってしまった以上、他にどうする手立てもなく、まほろはその場で固まっていた。
(上手くいくと、思ってたのに)
自分が道連れにされれば、あいつはきっと怒るだろう。
それだけが気がかりだったが、まあ、起こってしまったものは仕方がなかった。
悲鳴をあげるでもなく、ゆっくりと目を閉じる。
──覚悟していたものは、いつまで経ってもやってこなかった。
うっすらまぶたをもたげると、背の高い人影がまほろの前に立ち塞がり、野上璃子を
それは、ただ「喰っている」としか表現出来ない状況だった。
痩躯の影が進むたび、野上璃子だったモノがじりじりと後退さる。
やがて次第に、はっきりとどす黒かった輪郭が、滲んで縮んでいった。
獣の唸るような怒声に混じって、時折、絹を裂くような悲鳴が空気を震わせる。
一際高い絶叫が、長く響いた。
──出し抜けに、それがぷつりと途切れる。
夜の公園に、再び静寂が訪れた。
まほろは、詰めていた息を吐き出した。目の前の人影を見上げる。
細身のトレンチコートも、アイロンの効いたパンツも黒。
その痩躯は夜空に同化して、象牙色に光る肌に、月明かりが青白く影を落としていた。
「……やはり、あたしの言った通りになったね」
決して大きくないのに、聞く者を自然と黙らせるような声。口を開くたびに、深紅の舌と異様に長い犬歯が翻る。
日の影に隠れ、夜更け、その身を月下に晒すモノ。
人の形をとりながら、人の生き血を啜る異形の怪物。
「ほら、早く立ちなさい。自分で立つぐらい出来るだろう」
白皙の吸血鬼が、気怠げにそう言った。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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花尾安紀(プロフ) - 昴さん» お読みくださりありがとうございました! 更新頑張ります! (2016年5月4日 6時) (レス) id: 441a893882 (このIDを非表示/違反報告)
昴(プロフ) - 読ませていただきました!とても面白かったです!更新頑張ってください(((o(*゚▽゚*)o))) (2016年5月4日 3時) (レス) id: bf11e41d26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花尾安紀 | 作成日時:2016年5月3日 18時