第三十五話 ページ36
昨日の一年生の顔合わせが終わり、上からの命令で次は滋賀県に行くことになった。
滋賀県彦根市にある、廃病院に呪霊の被害があったらしい。
制服に着替え、寮の自室から出ると伊地知さんにばったりと出くわした。
「あれ?伊地知さん。寮にいるなんて珍しいですね?」
「えぇ。任務の件でちょっとこちらに…」
「そうなんですか…僕もこれから任務なんです。いつもお疲れ様です。」
「ありがとうございます。一条君も頑張ってください。」
「はい!」
挨拶を交わし、僕は新幹線で滋賀県に向かった。
こういう時に五条先生のような術式を使えたらいいんだけど……あいにくそうにもいかないらしい。
教えてもらったけど、ひとつもできなかった。
そういえば…明日から五条先生と共に行動を一緒にするよう言われたけど……どういうことなんだろう。
自分で言うのもなんだけど、特級呪術師を分けずに一緒にさせるって相当任務が滞ると思うんだけどな……上の考えてる事はよくわからん!
新幹線で寝て、起きると滋賀県の駅に着いたようだ。
朝に東京を出て、今はもう夕方に近い。
今回は誰も案内が居なくてちょっと寂しいけど、まぁ人手不足だから仕方ないか。
さっと行ってさっと帰ろう。
バスを乗り継ぎ、山を歩きながら廃病院に着いた。
ここは心霊スポットでも有名らしく、ここに来る途中に何名かのグループに出くわしたが、誰も呪いの残穢がついてる人はいなかった。
まさか、呪いはもう居ないのか?確かに、これだけ近づいても呪いの気配は一向に現れない。
廃病院の中を探索してみるが、どこにも呪霊どころか呪いの気配すらも感じられなかった。
一度、上に連絡してみるか。
「あ、もしもし?一条ですけど。例の彦根市の廃病院の件。どこにも呪いの気配が……!?」
電話の途中でとてつもない大きな呪力を持った物の気配を感じた。
今まであったことのないほど強い呪力……恐らく夏油の作った特級仮想怨霊よりも強い…!
「すみません…勘違いでした。」
そう言って僕は電話を切り、もう一度気配の方に集中する。
ビシビシと痛いくらいに呪力が伝わってくる。
この廃病院は四階建てで、上から伝わってくるということは四階……?いや、屋上か!
急いで屋上に向かうとそこには陥没しているのか、目が真っ黒な呪霊が立っていた。
「君が……一条Aかい?」
コミュニケーションを取れるほど高い知性をもつ呪霊か……やっぱり……今まで一番強い呪いだっ……!
40人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハクスイ | 作成日時:2019年7月2日 5時