第三十六話 ページ37
「話にならないじゃないか……答えてくれよ」
呪霊は手を広げ、首を少し傾げている。
まるで人間のような仕草をとる。
「呪いの戯言に付き合う気は無い……お前、何故僕の名前を知っている……」
「付き合う気は無かったんじゃないの?まぁいいか。実は前に夏油って奴から仲間にならないか誘われてね。」
夏油……!?またあいつが関係しているのか!
「その様子じゃ知ってるみたいだね。
で、僕はこの地に潜む地縛霊みたいなものだからここを離れると力を出せないから仲間にはなれないよーって言ったんだ。
そしたらあいつが一条Aってやつが近々来るから殺してくれないかって言われたんだよね。」
「お前は仲間じゃないのに、その夏油の頼みを呑んだのか……」
「うん。
だって、僕達呪いを祓う呪術師達と僕達呪いを救わんとする夏油達。
どちらかを応援するなんて子供でもわかるでしょ。」
「そうか……じゃあ、お前を……斬る!」
僕は指輪を呪具『黒影』に変形させ、居合の構えを取りつつダッシュで相手の間合いを詰める。
「いきなりだなぁ。せっかちな人は嫌われちゃうよ?」
相手の首元に刀を切り込もうと鞘から刀を抜く。
相手は刀を止めようと手を前に出そうとする。
以前、狗巻先輩から見て覚えた術式。
言葉に呪いを込めて、言霊として相手に送り、呪いを祓う。
この術式を使う人たちを呪言師というらしい。
今の僕には狗巻先輩のように精密な操作は出来ないけど、相手の動作を止めることならできる!
『止まれ』
「えっ!?動かない……」
その隙に乗じて呪いの首めがけて刀を斬り込む。
「黒影流抜刀術……陰先桜!」
この技は刀身に呪力を込めて斬撃を飛ばせる技だけど、刀身が直に触れると斬撃は飛ばずにただ、相手を斬ることだけに呪力が集中する。
だから、陰先桜を使用して相手を直に斬った場合普通に呪力を纏わせて斬るよりも百倍の斬れ味になる!
呪いの首が吹っ飛び、体がバタンと倒れる。
喉が少し痛む。やはり、呪言はそう易々と使えるものでは無いようだ。
さっきも呪力が分散して、相手に効くかどうか分からなかった……効いてよかった。
さて、この呪い以外の気配はしないし、もう帰るか。
「あー!ビックリした!急に体が動かなくなるんだもん!」
後ろから急に声が聞こえ、驚いて振り向くとそこには首と体を切り離したはずの先程の呪いが首を回しながら何事も無かったように立っていた。
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作者名:ハクスイ | 作成日時:2019年7月2日 5時