#どういうことですか ページ8
当然のごとく、SNSには多数の「大丈夫ですか」通知が来ていた
斉「A!」
『…ん?あ、おかえり壮馬』
息が詰まる
なんて言えばいいのか
目を腫らした彼に今、どう助言すればいいのか
『…僕…なにしてんだろ…?…ほんと…』
斉「…ばか…」
ただ、抱きしめてみた
冷たかった
人間とは思えなかった
『……ごめんね…』
こうして自分の生涯はクズらしく終わっていくのだろうか
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なんてレッテルを貼られ
でも、それを望んでいたのに
どこか空っぽで仕方ない
斉「…もうこの部屋から出た方がいいよ」
部屋の床には散乱したエナジードリンクや
いつかの台本
服 食べた後のゴミ
締め切ったカーテン、とジメジメしていた
斉「…江口さん、外で待ってるから」
『…なんで…』
斉「飲もーってさ、気分転換に行ってきたら?ていうか、もうそろそろ外出ろ〜」
『…えっ、ちょっと…着替えてないから!』
斉「…A、痩せたね」
『…元々だし…』
斉「もう着れる服ないでしょ?どうせ。俺の着てもいいよ」
『ありがと』
綺麗な部屋
カーテンが開いていて、壊れかけの日光が注いでいた
ゴミが散らかっていることもなく、ましてやエナジードリンクの缶なんて
『(壮馬にも色々あるからな…)』
斉「なに?じっと部屋見られると恥ずかしいんだけど」
『ごめん、すぐ決める』
パッと取ったニットにズボン
壮馬が着れば可愛いのだろうけど
自分が着ても、特になんの意味も生産性もなく
ただ虚しいだけだった
それでも、少し、輝いて見えたら
『…喜んでもらえるかな』
斉「心配しなくても、好きな人の格好は、どんなものであっても綺麗に見えるんだよ」
お酒の缶を持ち、ニコッと笑ってみせた
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作者名:幻路 | 作成日時:2020年7月19日 11時