# 美品 ページ5
目が充血している
ここ最近、急激に増えたAの仕事量
深夜のラジオや、アフレコ、イベントやインタビューなどなど
帰ってくるのも毎日0時を回っていた
梅「…最近寝れてないんでしょ…目、充血してる」
『………大丈夫だよ』
「すみません！そろそろ会場閉まります！！」
梅「はーい」
･
「じゃあ、無事イベントを終えまして！乾杯！」
乾杯！と、口々に揃えて言う
「いやぁ、今回のも面白かったですね〜」
「やっぱり橡さんの…」
「あれ見たかったっすね〜…」
色んな会話が耳に入る
机に並んだ料理
20何年生きてきて、かつてこんなにも料理が不味そうに見えただろうか
ましてや仕事終わりなのに
向かいの席には江口さんや花江くんや壮馬とか…その他関係者諸々だ
梅「本当に大丈夫？もう帰ろう？」
『いや…まだ大丈夫だから！』
梅「…そうか」
「それより！Aくん！家はどこら辺なの？」
Aの右隣に座ったプロデューサーが小さい声でそう囁いた
『えっと…個人情報なので…』
「連絡先交換しない？ねぇ…いいでしょ？次のアニメ出演、考えてあげるから」
『いや…流石に無理です…！』
「それじゃ、これからは仕事量減っちゃうかもね…？」
『なっ？！』
「それが嫌ならさ…今夜だけでも…どう？」
『…う…う…うめちゃ…』
熱くなった左手で、俺の右手に触れてきた
小さなSOSなのだと、すぐに気づいた
涙目で訴えてくる姿
梅「すみません、もう帰りますね、行くぞ、A」
『へっ……うめちゃ…』
手を大事に握ったまま、俺は後ろを見ず店の外に出た
『梅ちゃん！どこまで走るの？ちょっと…息続かないよ…！』
梅「まだ、行けるでしょ？家まで走って帰ろ！」
『もう…！梅ちゃん！ねぇ！』
小学生の頃を思い出した
もう少し苦しんでいるのを見たかったが
体調不良なのもあり、そこで断念した
梅「ごめん、意地悪しすぎた」
『…はぁ…はぁ…も…次やったら怒るからね』
梅「うん、もうしない」
その時気づいた
目が充血しているのは、仕事が増え
寝不足だったからではなく、
泣き腫らしていたのだということを
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作者名：幻路 | 作成日時：2020年7月19日 11時
