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保健室には先生が居なくて、真っ白な空間に私たち二人きりになる。
『大丈夫?寒くない?』
北「大丈夫だってー。Aちゃんは心配性だなぁ」
保健室にあった真っ白なタオルを渡すと、ベッドに腰かけた吉野くんはそう言って笑った。
北「俺よりAちゃんは?濡れなかった?」
『私は全然、!吉野くんが守ってくれたから』
私もベッドの近くに置いてあった椅子に腰を落ち着かせ、ぶんぶんと首を振った。
吉野くんが守ってくれたから、私は一滴も水がかかることは無かった。私の心を簡単に読み取っちゃって、辛い時は手を差し伸べてくれて。
『吉野くんは、私のヒーローだね!』
そう言ってにっこり笑うと、吉野くんは微笑みを返してくれた。
だけど、その微笑みにはなぜか悲しみが浮かんでいるように見えて、そして、その微笑みもすぐに力なく消えた。
北「.......俺はヒーローなんかじゃないよ......」
そう呟いた吉野くんの切なげな表情に、私の笑顔もスッと引いていく。
吉野くん.....?
たまに吉野くんは、悲しそうに、切なそうに笑う。
笑ってるけど、瞳の奥は涙を流しているようで....。
そんな微笑みを見ると、何故か私も泣きそうになるんだ。
北「.......ねぇ、Aちゃん」
『なぁに.....?』
北「俺、Aちゃんが俺のことで先輩に言い返してくれたの、すっげー嬉しかったよ」
『えっ?』
そう言いながら、吉野くんが私を見つめながら、近づいてきた。
まっすぐな瞳で見据えられ、思わず頬が赤くなるわたし。
先輩とのやりとり、見られてたの!?
あの時はもう夢中だったから、恥ずかしい......っ!
っていうか、ち、近いよ、吉野くん.....!
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作者名:MINT | 作成日時:2020年2月15日 1時