33話 ページ35
普段あまり呼び止めることがない彼が呼び止めた事が珍しく、後ろを振り向こうとした。
振り向き様に頬に伝わる感触。
リップ音、目の前に見える " 封 " の文字。
「 えっ…?
なっ、なっ…!!!」
「 オマジナイ、また悪い怪異に目をつけられちゃ困るからね 」
クスッと目を細めて意味ありげに笑う彼にぼぼぼっと上がる体温。
「 ばっ、ばか!」
その場から逃げ出して教室まで駆けていく。
上がった体温は中々下がることなく、教室について寧々ちゃんとアオちゃんに顔が赤いと揶揄されたが走ったからだと言い訳をし、自分の席へ着いた。
彼の想い人は私の前の席に座る彼女である事には変わりないと分かっている、自分だけが意識しているという事も自覚している。
でも、あんな事をされれば嫌でも期待してしまうし、もしかしたら振り向いてもらえるかもなんて思ってしまう汚い自分がいた。
5限目の体育の時間、私たち女子は今ソフトボールをしています。
私は紫外線アレルギーのため、もう夏も近い暑い気候だと言うのに冬の体操服を着ている。
暑くて暑くて体育どころじゃなかったため、木の影で休ませてもらうことにした。
「 見て、安見さんまた 」
「 本当だー、アレルギーなんて嘘で本当は焼けたくないだけなんじゃないの?」
わざわざこちらまで聞こえるようにクスクス笑いながら言う嫌な女たち。
中学の時からそんな思いをしてきたので慣れてはいるものの、やはりあんな言い方をされるとこちらとしてもイラッとくる。
私もできることなら半袖着てみんなと遊び回りたい、普通に体育だって受けたいし水着だってちょっと大人っぽいやつ着てみたい。
焼けたくないからって理由で毎日毎日長袖着てるんじゃなくて、焼けちゃダメだから着たくもない長袖着てるんだよ。
こんな事言ったところで彼女たちには届かないだろうし、私が余計虚しくなるだけなのでグッと堪えて聞こえないフリをした。
「 Aちゃん、気にしなくていいよ
寧々ちゃんと私はAちゃんがどれだけ苦しくて悔しい思いしたか知ってるからね 」
「 そうよ、あんな人たちの言葉に耳を傾けちゃダメよ!
Aちゃんの気持ちも知らずにあんな事言うなんて有り得ない!」
2人の可愛い救世主に私の心は一気に軽くなり、本当に嬉しかった。
「 アオちゃん…寧々ちゃん…、ありがとう!
私2人みたいないい友だち持てて幸せだよ!」
2人のおかげで外の体育もだいぶ楽になった日だった。
38人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
人参ぱんつ(プロフ) - yamiさん» お返事遅くなってしまい申し訳ありません、とても嬉しいお言葉ありがとうございます、頑張らせていただきます! (2020年8月21日 18時) (レス) id: a7aebfbb6e (このIDを非表示/違反報告)
yami - 凄く面白いです!更新頑張って下さい。 (2020年7月28日 12時) (レス) id: 0abcc7321c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:人参ぱんつ | 作成日時:2020年4月22日 1時