5話 進捗と子供 ページ6
風見さんが僕のことを依頼してから数日。時々、毛利さんと連絡を取りあっているみたいだが、僕にその内容を教えてくれなかった。積極的に聞かなかったからかもしれない。
「進捗とか気にならないのか?」
だからこんなことを聞かれるのだ。
「それとも思い出したくない記憶があるとか」
『そんなの……』
ない、とは言えないか。思い返すだけで、息が詰まり、死んでしまいたくなる記憶だってあるわけだし。
『いや、聞いて良いものなのかと思ってしまって』
「当たり前だろう。依頼は俺が出したが、実質の依頼主はお前だ」
『……なら、どこまで調べたのかとか聞いても?』
風見さんは嬉々として封筒を持ってきて、中の資料1枚ずつ説明してくれた。僕も聞かなかっただけで興味はあったから、前のめりとまではいかずともしっかり説明に耳を傾けた。
『僕が倒れてたところ周辺から暴力団関係まで……毛利さん凄いなぁ』
「結果はどれも空振りらしいがな」
『それでもですよ。
それで、この子供がトリガーかもってのは?』
「書いてある通りの意味だ。子供と交流していればなにか思い出すかも、と言っていた。そんなわけで明日、毛利さんところの江戸川君と遊んでこい」
『え?』
あまりに唐突なそれに間抜けな声を漏らせば、驚いた顔は初めてだな、なんて笑われてしまった。
『風見さんは?』
「仕事だ」
簡潔に素早く返された。
子供と遊ぶ、なんて初体験を前に怖じ気づいてしまい、やっぱり外は不安か?なんて気遣われる始末。
子供、苦手なんだよなぁ。
「江戸川君が友達と公園で遊ぶのを見守るだけだ。そう不安がることもない。それに、本当に無理なら断りの連絡をいれる」
どうする?
そう聞かれれば、言葉を積み重ねられれば、断るにも断れないじゃないか。親切をむげに返すなんてことも、お世話になっている以上できっこない。
『何かあった時のヘルプは毛利さんに頼みますよ。江戸川君も大人びていたし。うん、大丈夫』
自信満々とまではいかずとも、不安な顔は出さず答えたはいいが……。
「兄ちゃん、好きな食べ物とかあるか!?」
「あ!色とかでも良いですよ!」
「動物はどう!?」
『特別好きなものはないかなぁ。
うん、元気だね』
コナン君を含む5人(彼ら曰く少年探偵団)とポアロ前で合流し、紹介しあってから10分程、際限ない質問責めにあっている。
すでに心が折れそう。
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