3話 大層な名前だろ? ページ4
コーヒーがそれぞれに提供され、それらが半分まで減った頃には話の大半が終わっていた。
冷えてしまったなみなみのコーヒーに口をつけながら、ボンヤリとまた恩が増えてしまったなと考える。病院の費用に日々の生活費、今回の依頼料、僕は一生風見さんに頭が上がらないだろう。
「毛利さん、僕の出番はありそうですか?」
そろそろ解散するかといった雰囲気になったころ、店員のひとりがそう声をかけてきた。風見さんが毛利さんに説明を求めれば、弟子だ、と簡潔な答えが返ってきた。
「俺1人で十分だよ。それに坊主や蘭も首突っ込んでくるだろうしな。不本意だが手は足りてる」
なんでもこの安室と名乗る店員は、人づてに僕のことを聞いたらしく毛利さんに何か分からないかと相談していたらしい。そして、依頼なら受けるという毛利さんを、つてを辿って風見さんに紹介した、と言う流れらしい。
これから仕事に向かうという風見さんに、数住はここで食べていけと指示された。
『え、風見さんはどうするんですか』
「適当に済ます」
『コンビニ弁当で、なんて言いませんよね』
「‥‥」
不摂生をとがめるように言えば、何故か睨まれてしまった。いつもなら聞き流されてしまうというのに。
「おや風見さん。体は資本と言いますし、コンビニで済まさず食べて行かれてください。お店も潤いますし」
「‥‥商売上手ですね」
盛大に口端を引きつらせながら言うことではないと思う。
結局、時間があまりないと言ってサンドイッチをテイクアウトし、風見さんは仕事に向かってしまった。
1人残された僕はぼっち飯、とはならず、もう少しで来るという毛利さんご家族と一緒に食べることになった。知らない人間がいれば楽しく食事出来ないのではと遠慮したが、そこまで繊細な人間じゃないと言い切られてしまえば頷くほかない。
毛利さんの娘さんや居候の少年が来るまで、依頼内容の確認や毛利さんご家族のはなしをして時間を潰した。娘さんは毛利蘭といい、その蘭さんが拾ってきたという少年は江戸川コナンというらしい。
『江戸川?』
「ああ。大層な名前だろ?なにせ小説家の名前が2つも入ってる。しかもどっちもミステリー作家ときた」
探偵である毛利さんには縁起が良いですね、なんて世辞を言いながら、聞いた名前に考えを巡らせる。
キラキラネームと言って差し支えない、名付け親の趣味全開の名前。僕はそれに聞き覚えがあった。それも前世でたまたま観たアニメの中で。
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