13話 暴挙 ページ14
映像内で行われた暴挙に、元々荒くなっていた息がさらに乱れる。そのせいか酸素が足りなくなり、頭がぼうっとする。
「気絶にゃまだ早いぜ」
ﾊﾟｧﾝ
『ッ〜、』
乾いた銃声とともに、今までとは比較にならない痛みが腹に走った。霞んだ思考が強制的に引き戻される感覚を覚える。そうしてクリアになった視界で、さらに腹を撃たれる妻の姿が映像に流れた。
「ほら追加だ」
２発、更に撃ち込まれる。これだけ撃たれて死なないのは弾が小さいからか、貫通していないからか、はっきりと分からないが、この拷問が続くことだけは理解できた。
「愛しの奥さんとおんなじ死に方できるんだ。幸せもんだなぁお前も。慈悲深さに感謝してほしいくらいだ」
痛みに喘ぎながらも、しっかりと男を睨みつける。妻が死んだ、子供も死んだ、目の前の男によって！！
「おぉ怖。まだそんな目ができるとはな」
撃たれ、骨を折られ、時に殴られ、自分でも生きているのか死んでいるのか分からなくなってくる。何より辛かったのは声が出せない僕と違い、映像からは妻の悲鳴が聞こえてくることだった。意味もなくやめてくれと叫びたくなる暴挙の数々に、自然と目尻に涙がたまる。
「おうおう、泣くなよ。あとちょっとで死ねるんだ、それまでの辛抱さ」
痛みつけたところを確かめるように再度殴りつけていき、ようやく男に飽きがきた。
「お前も女も楽しかったぜ。ここまで長くなったのあんたら二人が初めてさ」
それじゃあな、という別れの挨拶とともに、耳元で一際大きな銃声が鳴り響いた。
「す…み…」
誰かが僕を呼んでいる
「おい、……ろ」
死んだ僕が応えるはずもないだろうに
「数住！」
『っ！』
完全に覚醒した僕の目の前には男が…それを視認した瞬間、襟首を引っ掴み自分が寝ていた布団に相手を押し倒していた。
「おい、数住？どうした」
『風見、さん…
すみません』
夢だった。いや過去の出来事を夢で見たのだ。あの何も出来ず全てを失った忌々しい過去を。
『怪我とか、』
「俺は警察だ。それなりに鍛えている。受け身くらい朝飯前だ」
再度謝れば、支度をするよう促された。窓の外を見ればすっかり日が昇っている。
なかなか起きてこない僕を心配した風見さんが、うなされているところを発見して起こしてくれたらしい。だというのに僕は寝ぼけて恩人を押し倒す暴挙を行ってしまった。本当に申し訳ない。
「予定通り買い物に行くが体調は大丈夫か?」
『平気です』
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