とある研究員の資料 2【実況者】 (ページ6)

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「それ、この部屋だけでやろ？」

どうやら、彼の方が頭が冴えているようだ。

「あぁ。そうだね」

上辺の笑顔をやめて薄い笑みを浮かべる。

「でも、それの何が不満だ？君はこの部屋の世界しか知らないのに、それ以上を求めると？」

君にはどうせ叶いっこない。だって、外での私を知らないのだから。

「あぁ、せやで。ここ以外で一番になりたくない理由なんて、存在してへんやん」

彼の言葉がわからない。否、理解したくない。

「一番なんてそんな曖昧なもの、すぐに変わるだろ。何にせよ」

候補が多ければ多いほど、同率が増えていく。要するに、最もという言葉はただの一時の気分で最高にも最低にもなるのだ。

「変わらへんようにすればええだけやん」

彼は薄い笑みを浮かべる。何か企んでいるようで、だが詮索はできない。

「先生の頭が、俺以外を考えんようにすれば････。不可能やないんよ」

端正な唇を横に引き伸ばした笑みに、私は肩をすくめるしかない。

「随分強引なことを考えるね。そんな不可能に近しいことを」
「でも不可能ではない。なら試す価値はあるやろ」

濁った蒲公英の瞳が私を刺すように見る。

「そのやる気を別のところで活かしてくれないか？」

小さなため息を漏らす私に彼は一言。

「ぜーったい、嫌や」

彼は白い頬を薄い赤に染める。

「･････君、この状況を楽しんでるだろ」
「当たり前やん。だって今先生は、俺のことしか考えてへんねんから」
「君を調査しに来ているんだから、君のことを考えるのは当然だ」

鬱陶しい言葉を一蹴し部屋を去る。

「先生」

静かに、名が呼ばれる。

「平穏は、いつまでも続かへんで」

私は彼の言葉に答えることも問いかけることもせず、そっと部屋を出る。彼の言う平穏が何を指しているのかはわかっている。だがそれを理解したくないし、考えたくもない。わかってしまえば、私は彼の手のひらの上で踊らされていることになるから。それだけは、断固として嫌だった。

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独占型
思考すら自分のものにしたがる