先輩、俺のオメガでしょ？ (ページ7)

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先輩、マーキングされたの？ページ7

ym side

伊野尾先輩の首筋辺りにその人の顔が重なるところを目の当たりにした瞬間、居ても立っても居られない衝動に襲われ、気付いた時には先輩とその人を引き離すように間に割り込んでいた。

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「先輩、なにしてんの、こんなとこで」

『え、山田くん…？』

有岡「誰？伊野ちゃんの知り合い？」

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「マーキングされたんだ？番えれば誰でもいいのかよ。やっぱり、オメガは淫乱なんだな」

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… 何言ってんだ、俺、

どんどん表情が曇っていく先輩の顔に胸が痛む。
こんなことを言いたい訳じゃないのに、口が勝手に動いて…

有岡「なあ、流石にそれは失礼なんじゃない？」

『… 大ちゃん、大丈夫だから』

"大ちゃん"と呼ばれたその人は納得のいかない顔をしながら俺の目を見つめる。これ以上余計なことを言うなっていうような鋭い視線。

そんな彼を宥めるように、伊野尾先輩は緩く口角を上げてみせながら俺と同じくらいの高さにあるその人の肩をトン、と叩くと、そのまま此方を向き直り『ほんと、困ったちゃんだなぁ、山田くんは。』と怒る訳でもなく微笑み掛けてきた。

「 … 」

『有り得ないよ、それは。そもそも大ちゃんはβだし。俺からαの匂いもしないっしょ？』

ここまで至近距離に居ても、たしかに先輩からαの匂いはしなくて。ただ遠目に見えたものから勝手に判断して、衝動的に発してしまった言葉や行動を今更取り消すことを出来る訳もなく。

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ああ、俺もあの女と同じか。
自分の本能もまともに抑えられずに、冷静さを失って、こうやって相手を傷付けて。

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『だから、俺はマーキングされてません…って、山田くん？なんで泣いて…』

心配そうに此方を見る伊野尾先輩のひんやりとした手のひらが俺の頬に添えられた時、自分の目から無意識に涙が溢れていたことに気付く。

募る罪悪感と自己嫌悪から先輩の顔を見ることが出来なくて、俺は何も言えないままその場から逃げ出すように2人に背を向けると、『山田くん！』と呼ぶ声に振り返ることもできずに走り去ってしまった。

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教室に戻る気にもなれず、辿り着いたのは静かな屋上。

ベンチに仰向けになった時、視界に広がる空はまるで俺の心の中を表すように濁った鉛色の雲に覆われていた。

なにやってんだよ、俺は。

本能に負けたくはないし、支配されるのは勘弁だ。
どうにかしないと＿＿＿＿

先輩にも、後で謝らなきゃな。