回想 ページ28
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中学3年の夏だった。
高木「ねえ、この高校の場所わかる?」
駅で話しかけられたのが高木との初めての出会い。
県外から転校してきてその日が初登校だったらしく、道を詳しく知らないんだと。
今思い返せば、スマホでマップ見りゃ分かるじゃんとか思うけど、その時はそんな考えが湧くことなく 普通に道案内した俺。
まあ、俺が通ってる学校も同じ方面だったし、なんならその高校道中にあったし、断る理由もなくて。
高木「へえ〜、伊野尾くん中3なのか!俺年上じゃん」
初めて会ったはずなのにすぐに打ち解けて、毎朝一緒に登校するくらいに仲良くなった。そのままの関係で居られたら良かったんだけど、
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俺らは一線を越えてしまった。
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高木から溢れるアルファのフェロモン。
それに応えるように俺の中のオメガも目を覚ます。
生まれて初めて本能に身体を乗っ取られた瞬間だった。
高木が、アルファが欲しくて堪らない、抱かれたい。
中3の未熟な俺はそれを運命だと勘違いした。
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それからというもの、高木と会う度に身体を重ねた。沢山の言葉も交わした。俺の中のオメガが溢れて、抑えられなかった。いつの間にか、高木を好きになっていた。
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高木「なーに、話って」
男らしい身体にシャツを羽織りながら此方を振り返る高木。今日こそ気持ちを伝えるんだと覚悟を決める。
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『… 俺、高木が好きだよ』
『番に、なりたい』
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高木「ごめん、俺、そういうつもりじゃなくて…」
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高木「番は無理だよ、伊野尾くん」
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高木「Ωと付き合う気はないんだ」
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頭が真っ白になった。やっとのことで口に出した彼への気持ちは一瞬にして破り捨てられていく。
全部、全部一方通行だったんだ。
虚しさと悲しさに飲まれ、視界がぐしゃりと歪む。
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高木「伊野尾くんが誘ってきたんだよ、全部。
俺はΩになんて興味無いのに____」
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あの日以来、高木が忘れたネックレスを毎日見て、自分で自分の心を抉って。
多少なりとも未練があったのも事実。あれだけ言われても好きを捨てられないとか、俺、どんだけ未練がましいんだよって。
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「伊野尾ちゃん、」
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でもね、聞いて
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俺、今すげえ幸せなんだよ
山田と一緒なら、過去も水に流せそうな気がするんだ
… それだけ、貴方に夢中だから。
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作者名:猫 | 作成日時:2023年3月1日 20時