君を、想ふ -藤北-

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「ただいま」

「おかえり」

「…えっ？」

記憶のないたいに、おかえりと言われて隣を見た。

「…えっ？言っちゃダメだった？」

「いや、そうじゃなくて…言われると思ってなかったから」

「言われると『帰ってきた〜』って感じするよね。よし、入ろ〜」

たいが靴を脱いで先に行ってしまう。

後を追いかけて、リビングに向かった。

「…へぇ」

リビングを見回して、そう呟くたい。

あっ！

慌てて飾ってある２人の写真立てを伏せた。

「どうしたの？」

振り向いて、身を挺して隠す。

「な…何でもないっ」

「何隠したの？」

「だからっ、何でもないってばっ」

「怪しいな〜…えいっ」

たいがフェイントをかけて、隠した写真立てを持ってった。

「…へぇ」

本日、２回目の「へぇ〜」頂きました…って、そうじゃなくて！

「…俺、良い顔して笑ってるね」

だろ〜？

何枚か候補があって、その中から選んだ渾身の一枚。

「可愛いね、北山」

その呼び方に、愛が籠ってない。

「これ撮ったの、いつ？」

俺を見つめるその目に…愛を感じない。

「北山と一緒に撮った写真〜♪ヾ(・ω・)ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ」

頭を撫でるその仕草に…心を感じない。

愛を失って分かる。

いつも…どれだけ太輔の愛を貰っていたか。

言葉だけじゃなくて、行為だけじゃなくて、それ以外の仕草に愛を注がれていたか。

…涙が、溢れる。

「…北山〜。ごめんね、泣かないでよ〜」

たいが謝ることは何もない。

俺が悪いんだ。



楽屋でも仕事でも、たいは俺がニカといるのをあまり良く思ってない。



それを分かってて…ニカの名前を出して、困らせた。



そして…心を傷つけた。

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