君を、想ふ -藤北-

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マネージャーの車に乗って、病院に急いでもらう。

握りしめる手が震える。

たい…大丈夫だよね？

こんなことになるなら、仕事に行かないでなんて言わなきゃよかった。

命がなければ、一緒に生きることも笑うことも、愛を伝えることもできない。

病院に着いて、受付に走る。

「あのっ、救急で運ばれた藤ヶ谷 太輔は…っ「北山さんっ」

たいのマネージャーの巽さんが俺を呼んだ。

「こっちですっ」

「巽さんっ、藤ヶ谷はっ!?」

「落ち着いてください。検査も処置も終わって、今部屋で眠ってます」

「連れてってっ」

巽さんの後を追いかける。

通された病室に入ると、頭に包帯を巻いた痛々しいたいの姿…。

「なんで…こんなことにっ」

「藤ヶ谷さんをマンションに送ったんです。その後に…スーパーに行ったみたいで…帰り道に、通り

魔によって…バッドで殴られたようです」

「バッ…バット!?」

あれは球を打つものであって、人の頭を殴るものじゃないっ。

「相手は未成年で…その場で現行犯逮捕されました」

殴った相手を同じ目に遭わせたい…。

でも、そんなことしたって、たいのケガが治るわけじゃない。

「……ん」

たいが目を覚ましたっ！

「……え、誰？」

駆け寄ろうとして、その言葉に動けなくなった。

「…藤ヶ谷？」

「…それが、俺の名前？」

俺の事も…自分の事も分からないの？

「…痛っ」

起き上がるから、ケガが痛くてまたベッドに逆戻り。

「藤ヶ谷っ、動いちゃダメッ」

「痛い〜…なんでぇ？ここどこ？」

「ここは病院っ！頭殴られて病院に運ばれたんだよっ、ジッとしてろっ」

「…帰らなきゃ」

「え？」

体を押さえていた手を突き放される。

「帰るってどこに!?」

「どこか分からない…でも、帰らなきゃ。待ってる人…がいるんだ」

振り返ると、巽さんが苦笑い。

「今日、仕事を入れてしまってすみません。藤ヶ谷さんは、旅館の予約を取り直すと言ってました。

スーパーに寄ったのだってきっと…北山さんの胃袋を掴もうと、お肉、たくさん買ってましたから」

買い物の帰りに襲われて…その時のスーパーの袋を渡される。

中身は…野菜とたくさんの…肉。

俺の…大好きな、肉だ。

「仕事で行けなくなった…せめてもの罪滅ぼし、かと」

「藤ヶ谷…」

涙が溢れる。

「帰らなきゃ…帰らなきゃ」

そればかり繰り返してる。

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