君を、想ふ -北藤-

37 ページ37

「…ぁっ、あぁっ……」

痛みの間隔が狭くなる。


痛い。

いたい。

イタイ。





消えてしまうのはもう、諦めるから。

消える前に…。



「……まっ」



アイタイ。



「……きっ、たやまっ」

『藤ヶ谷、今どこにいる！？』

インカムから、北山の声が聞こえる。

「中央…の、ステージそで…のとこ」

『すぐ行く！スタッフさん！！少しの間、インカム外してくださいっ！千賀！横尾さん！歌終わった

らハケないでトーク入って！玉、二階堂、宮田もステージ出て話してて！』

そんな声が、耳に入る。



……イタイ。

アイタイよ、北山。



体が傾いて、その場に倒れる。

「姫っ！」

…また、北山が俺に向かって『姫』って言う。

抱き起されて、北山の顔が近くなる。

「大丈夫か！？」

もう、消えそうな気がする。

「しっかりしろ！」

最後に…言わなきゃ。

気持ち…伝えなきゃ。

「…ねぇ、きたやま」

自分の声が頭に響く。

お願い、届いて。

「なんで…俺のこと、姫って…言うの？北山の大事な人は…他にいるんでしょ」


ﾁｸｯ。


胸が痛む。

「俺の大事な人は…お前だよ、藤ヶ谷」

「……え？」

「誰のものでもない。俺は、お前のものなんだよ」

俺が…北山の、大事な人？

「きたやま……っ、北山っ」

痛みがひどくなって、北山の衣装を掴む。

「俺…っ、北山を好きでいるの…辛かったっ。北山に大事な人がいるって知った時…苦しかったっ」

でも…そうじゃなかった。

俺と…北山は、両想い、だったんだ…。

「…ぁっ、痛…っ、いたいいぃぃっ」


頭を抱えても。

暴れても、痛みは消えない。

薄れていく意識。

消えていく…自分と記憶。


「…や、だっ、消えたくない…っ」

「藤ヶ谷っ」

「…消えたくないよ…ぉっ」

溢れる涙で視界が揺れる。





でも…消えなきゃ。

いなくならなきゃ。




皆が、笑ってくれない。

38→←36

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す