君を、想ふ -北藤-

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ライブ中は、歌とダンスに集中した。


間違えないように…失敗しないように。


皆に迷惑かけないように。


そればかり考えた。


北山の…顔も知らない大事な人のことを頭から追い出した。


今日も、何とか無事にライブが終わって…。


北山は今、シャワーを浴びてる。


メンバーはそれぞれスタッフさんとしゃべったりしてる。


ふと、思う。


…もしかして、俺邪魔かな？


北山…俺がいるから。


俺に構い過ぎて、好きな人と一緒に過ごせないのかも。


「ガヤ、お疲れ〜。今日もちゃんとできてたよ〜」


そう言って、俺の頭を撫でてくる。


「…ねぇ、玉」


「何〜？」


「…北山って、好きな人いる？」


「え？」


「姫呼びしてる大事な人…いる、よね？」


ﾂﾂ〜ｯ。


玉が目を逸らす。


他のメンバーも、同じ行動を起こす。


知ってるんだ…。


姫呼びする人のことも。


その人が大事な人だってことも。


「…そっか」


いるよね…かっこいいもんね。


俺…邪魔だよね。


男とくっついて寝るの…嫌だよね。


ほんとは…好きな人と一緒にいたいよね。


俺がダメだから、北山は放っとけないんだよね。


俺がちゃんとすれば…。


「ガヤ…？何考えてるの？」


「……うん。大丈夫」


「何が？」


「大丈夫だよ、玉」


「だから何が？」


ふわふわした玉が、真っ直ぐな目で、俺を見てくる。


「泣いてるのに、何が大丈夫なの？」


そう言って、涙を拭いてくれる玉。


自分でも拭いて、笑顔を見せる。


この胸の痛みは気のせい。


北山には大事な人がいるんだから、好きになっちゃダメ。


大丈夫…痛いのには慣れてる。


「北山が戻ってきたから、シャワー浴びてくるね」



何か言いたそうな玉に言って、その場を離れた。

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