触らない痴漢 -北藤-

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〜宏光Ｓｉｄｅ〜

朝、ベッドから飛び起きた。

時間は７時１７分。

昨日の今日で、早速寝坊!!

やべぇ！

顔を洗って、牛乳を飲んで、母さんが作った朝食を食べる。

「電車に乗り遅れないのよ〜」

母さんののんびりした声を聞きながら、家を出た。

自転車で駅まで漕ぐ。

何とか４０分に着いた。

「ふぅ〜…間に合ったぜ(´▽｀) 」

改札口を通って、たいと待ち合わせ場所の車両の前に立った。

俺が乗る時はそんなに人はいないんだけど、たいの乗る駅からは、一気に人が増える。

電車が到着して、入り口付近のパイプに掴まった。

スマホを取り出して、メールする。

『今、電車に乗ったから 宏光』

電車が駅に到着して、人の波に押される。

こっちに向かってくるたいの腕を掴んで引っ張った。

「たい。おはよ」

「……うんっ、おはよっ」

片手でパイプにしがみつき、片手で俺の制服を掴んだ。

「たい…？大丈夫か？」

「ひろ…っ、手握ってっ」

「…ああ」

額には脂汗。

そばにいるのか？

制服を掴む手を握る。

「たい。俺を見ろ」

目を閉じるたいに声をかけた。

「大丈夫か？気分悪い？」

「……ん。吐き…」

体の震えが伝わってくる。

「…ひろぉっ」

「…近くにいんのか？」

小声で話しかける。

何度も頷くたい。

震える体を抱きしめて、たいの後ろに立つ相手を見上げた。

……普通のスーツを着た４０代くらいのおっさんだった。


目が合った。


どうする？

ここで痴漢をやめろと言って、周りに変態扱いされる様を見届けるか。

それだと、たいが好奇な目に晒されるよな…。

「ひろ…っ、ひろっ、やだっ」

後ろに立たれてるのが嫌なんだろう。

電車が揺れた瞬間、俺はたいの腰を引き寄せた。

「たい。俺にくっついてろ」

「ん…ぅんっ」

正確には抱きしめられてんだけどｗｗ

ホームに入って、ドアが開いた。

片手でたいの手を、片手で、痴漢野郎の腕を掴んだ。



「ちょっと、顔貸せよ」



逃げるのを許さず、とりあえず電車を降りて、トイレに向かった。

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