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藤ヶ谷さんの部屋に泊まる機会が多くなってきたある日。

「ねぇ、北山くん」

「はい?」

顔を上げると、藤ヶ谷さんが俺の長い前髪を指で掬った。

「前髪、切らないの?もったいないよ、可愛いのに」

「だから…藤ヶ谷さんくらいです。そんなこと言うの」

「え〜、本当のことだよ」

切った方が…いいのかな。


言われた次の日。

鏡を前にして、自分の顔を見る。

前髪を持ち上げて右手に持っていたハサミを動かした。

翌日。

店内の隅で隠れていると。

「おはよう、みつ」

店長に挨拶された。

「…おはよう、ございます」

「あれ?前髪切ったの?」

気づかれた…気づくよね、普通。

「変…ですか?」

手で隠す。

「ん〜…」

「変、ですよね」

失敗した…藤ヶ谷さんに会わす顔がない。

「ちょっと、トイレに行ってきますっ」

奥に引っ込み、トイレの前でため息をつく。

藤ヶ谷さんに会わないようにしなきゃ…。

「北山くん?」

その時、後ろから藤ヶ谷さんの声がして前髪を隠した。

「こんなとこにいたの?店の中にいないから探しちゃったよ」

「ちょっと、トイレに…」

「じゃあ、俺も」

藤ヶ谷さんはドアノブに手をかけるフリしてこっちに向き直ると、いわゆる壁ドンされた。

「あれ?もしかして前髪、切ってくれたの?俺が言ったから?」

「え、あの…」

「見せてよ」

「変になっちゃったから、見せられませんっ」

「え〜、見たいな。お願い…見せて」

そのハスキーヴォイスに逆らえず、隠していた手を退かした。

「可愛い」

「本当…に?変じゃないですか?」

「変じゃないよ。可愛い」

藤ヶ谷さんは前髪を掻きあげて額にキスをくれる。

キスは…唇にしてほしい。

「ちょっと、ごめんね」

手を引かれて狭い個室に2人で入ると、後ろ手で鍵をかける音がした。

両手を背中に回して、抱きついた。

「藤ヶ谷さんと、ずっとこうしたかったんです」

「ハグもキスも、いつでも大歓迎だよ」

「あの…藤ヶ谷さん」

「何?」

上を向いて藤ヶ谷さんを見上げる。

「額じゃなくて…キスは、ここにしてください」

自分の口を指差す。

「足りない?」

「藤ヶ谷さんとするキスはとても…気持ちいいです」

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まほまま(プロフ) - 次は愛の実に決まったんだね。イチャイチャも読みたいけど、アイツとの決着もまだ着いてないもんね。 (2018年4月29日 22時) (レス) id: de2262a235 (このIDを非表示/違反報告)
kmf2kkrtmm(プロフ) - まほままさん» ここも癖が出とる〜っ!!あ、次は移行します〜。タイトルは「愛の実」!!「恋の実」じゃないから〜( *´艸`)恋はもうしてますからたくさんの愛を注いでもらいましょう…という意味で愛の実に決定しました〜。見つけた際にはお待ちしてます〜♪ (2018年4月29日 6時) (レス) id: 0bbb450268 (このIDを非表示/違反報告)
まほまま(プロフ) - ここもクセが出とるわ(笑)てか笑えなーい!読んでて涙出たわ!ひろは死ぬかもしれない恐怖の中でたいに電話をかけた…。たいはわかってしまったよね、あの血の量を見たら…たいの気持ち考えたら涙出た…。 (2018年4月28日 22時) (レス) id: de2262a235 (このIDを非表示/違反報告)
まほまま(プロフ) - ドアに鍵がかかってなかった…。それだけでひろの異変に気付くたい。かなり深い愛だよね。たいには腹わた煮えくり返っていてほしい。だってひろにあんなに酷い事したんだもん。でないと私の腹わたがおさまらない!メッセージ、いつでもカモンよ〜(*´艸`) (2018年4月27日 22時) (レス) id: de2262a235 (このIDを非表示/違反報告)
kmf2kkrtmm(プロフ) - まほままさん» 腹の中は煮えくり返ってるでしょうね〜。でも、ひろに対しては純粋に自分の指に感じてくれてるのは嬉しいと思っております。成敗の方法…ちょっと、メッセージで送ってもいい? (2018年4月27日 7時) (レス) id: 0bbb450268 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ともみ | 作成日時:2018年3月21日 6時

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