声を失った姫 -北藤- (ページ12)

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『皆？ファンの人も、メンバーも？』

「そうだよ。誰も離れない。お前のそばにいる」

ひろが、ゆっくりと俺に話しかけてくれる。

「たいに告白したときに心に誓ったんだ。一生かけて、守るって。俺は絶対に離れないから」

ひろの言葉がスゥーッと心に落ちてきた。

ずっと…不安だった。

声が嫌いと言われて、当たり前に出ていた声が出なくなって…これからの未来に、俺は必要とされ

なくなるんじゃないかって思うと、怖かった。

今まで一緒に歩いてきた道を…この先も歩けなくなるんじゃないかって思ったら、足が竦んだ。

『皆と一緒にいたい。これからもずっと…俺を置いてかないで。一緒に連れてって』

ノートに思いを込めて綴る。

「連れていくよ。当たり前だろ…なぁ、たい。不安な時は俺に言え。抱きしめて、好きなだけ抱い

てやるから。不安も恐怖も、俺が消してやる」

ひろに手を伸ばして抱きつく。

「俺は、ここにいるよ。たいのそばにいる」

そう言って抱きしめ返してくれた。

横になって、自然と近づく距離。

この日は、ひろに抱きしめてもらって、不安を忘れて、腕の中で眠った…。

～宏光Ｓｉｄｅ～

たいが、あの日にあったことを話してくれた。

声が嫌い？この綺麗で心地いい声がうるさいって？

顔は見たけど、知らない人だと言う。

局に入れるってことは、どこかの番組のスタッフか…？

腕の中から姫から寝息が聞こえてきて、目を開けた。

「辛かったな…」

目元に滲む涙を指で拭いた。

声が出なくなるのも怖いけど、姫の中での恐怖は俺達が離れていくと思ってるようで…。

ひたすら、離れないで、置いて行かないでと伝えてきた姫。

とにかく原因が分かれば、後はその問題に対処するだけ。こいつを守るだけだ。