キス限定 -藤北-

慰めのキス ページ42

〜宏光Ｓｉｄｅ〜

ずっと…ずっと好きだった人に告白した。

ノーマルで、遠くから見てただけだったけど。

受け入れてくれたことが嬉しくて泣いたのを覚えてる。

付き合えたことが、一緒の時間を過ごせることが奇跡で…楽しくて。

…ドキドキした。

恋の苦しさと痛み、そして…喜びを教えてくれた人。

でも…幸せは長くは続かなかった。

その人に…ある日、言われた。


『好きな人ができた』


彼も俺も、もちろん男。

小さい頃から男の子が好きだった俺と違って。

彼は…ノーマル。

普通の人。

「…ど、どんな子か、聞いてもいい？」

そう言うと…彼は、俺の目の前に連れて来た。

小さくて…笑顔が可愛い女の子。

そう…彼は、結婚して、子供が欲しいと…俺に言った。

「ごめん…」

「謝らないでよ。こうなることは分かってたし」


男は…子は作れない。


結婚と子供…どっちも叶えてあげられない。

すれ違う子供を、愛おしそうに見てたこと、気づいてたよ。

いつか…こういう日が来るんじゃないか…って思ってた。

今日…この日を迎えることがすごく、怖かった。

でも…同時に、彼を解放してあげることができる…とも、思った。

「俺の方こそ…付き合わせてごめんね」

「みつ…」

「結婚と子供…夢を叶えてあげられなくて、ごめん。もっと早く言ってくれればよかったのに…俺と

無駄な時間…っ、過ごさなくて済んだのに…っ」

涙が込み上げる。

泣くな。

重い奴だって思われたくない。

「みつ…お前を好きだった気持ちに嘘はないよ」

「…渉」

「みつと過ごした時間を無駄だとも思ってない。短い時間だけど…一緒に居られて嬉しかった。楽し

かったよ。思い出をありがとう。みつ」

「……っ、俺の方こそっ、楽しい時間をありがと…っ」

握手して別れた。

「…ぐすっ…うぅ…〜…っっ」

失恋…かぁ。

泣き顔を見られてもいい。

今日は…泣こう。

泣いて…泣いて、また明日から頑張ろう。

コンビニでビールとキャラメルプリンを買って、近くの公園に移動した。

ベンチに座って、缶ビールのプルタブを開けて、一口飲んだ。

「……美味しくないっ」

一人で飲むビールは…美味しくない(´;ω;｀)

渉は…俺を可愛いと言ってくれた。

普通の…ノーマルの人だって分かってたじゃん。

俺を傷つけないように、俺といた時間を楽しかったと言ってくれた渉。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す