壱話 ページ2
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入院生活を始めて、はや五日目。
このころになれば俺が行動できる範囲で院内の地図はもう頭の中に入っていて、
図書室には難なくたどり着くことができた。
適当に棚からとった読みかけの本に指を挟み、ふと考える。
俺はいったいどこから来たのだろう。
いや、そんな壮大で漠然とした話じゃないのだ、俺は間違いなく地球生まれの地球育ちだ。
…そのはずだ。
今まで見舞いに来たのは桃色の髪の男と、酒臭い体格のいい男、
それと水色の髪のやけにキラキラした男に連れられて三人ほど小さな男子がやってきた。
赤い眼鏡のかわいいやつ、短いこげ茶色の髪の元気がいいやつ、賢そうで俺のことを旦那、なんて呼ぶやつ。
そのほかにも数名きたが、全員性別は男だった。
俺に女の知り合いはいないのだろうか。
そいつに「俺はお前の旦那じゃない。」といったら大爆笑された。
いや、俺も自分で変なことを言ったと思ったが、何となく前にもそんなことを言った気がするのだ。
そいつらは「その様子だったら大丈夫そうだな、またくるぜ。」と言って帰っていった。
…ってそうじゃない。
問題なのは、俺の家族らしい人物が今まで一人も来ていないということだ。
見舞いに来た奴に聞いても、俺はたいして自分のことをしゃべるやつじゃなかったらしく
つかず離れずの距離を保っていたらしい、おれの家族構成などは把握していない様だった。
まあいい。
今日の検査で医者に聞いてみれば、きっといくつか情報がつかめるはずだ。
いつの間にか挟んでいた指が外れていた、読みかけのページを探すべく、
俺は再び本を開くのだった。
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作者名:躑躅 x他1人 | 作成日時:2016年12月5日 1時