歌い手なんてならなきゃよかった

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『う、えぇ……』


「はい。ゆずかちゃんお水」


『ありがとまふくん』


まさかあんなことになるとは……









30分前


私達3人はメートに行くため電車に乗っていた


奏多とまふくんはマスクと眼鏡をして変装していた


が、


僕、ゆずかは違った


なんの変装もせず電車に乗ってしまったのだ









最近顔出しはしていない


でも、世間はそんなに甘くない


赤メッシュのポニテと声だけでゆずかと特定されてもおかしくなんてないのだ


その結果









「歌い手ゆずかさんですよね⁉サインください！」


「え⁉嘘⁉ゆずちゃん⁉」


「「ゆずちゃ〜ん！」」


『うえ……』


ただでさえ酔いやすい体質なのだ


そのうえ人混みに晒されるとなると……









『あぁ、もう歌い手辞めたい』









そして今に至る


「お疲れ様、ゆずちゃん♡((裏声」


『おいテメェ奏多！気色悪りぃんだよ‼』

と、いつもなら言い返すのだが残念ながら今の僕にそんな気力は残っていない


時々込み上げてくるアレを必死に抑えるので忙しい









「ま、この調子じゃメートは無理だな」


「そうだよね……ゆずかちゃん今日は諦めよ？」


で、でも！今日買わないと初回限定版が売り切れる


そういうと、奏多の顔が激しく歪んだ


……やば。これ、怒られる


「俺が買ってくるから。真冬、Aお願い」


「え？あ、はいっ！」


僕はというと口をぽかんと開けてしまった









「……何だよ？」


『奏多が優しい』


「……俺はいつも優しいだろ」


なぜか顔が赤い奏多


チラッとまふくんを見ると何故かニヤニヤしていた


結局何もわからないまま、まふくんと帰った

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