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『治くぅん!!!会いたかったぁ!!!』
砂色の外套を着込んだ彼に飛び付くとうぐ、と呻き声がした。
「一寸、退いてくれない?苦しいのだけど」
『御免ね、でも本っ当に嬉しくて…!4年半振りだね!』
ガチガチにフォールドしていた手を少し緩め、彼の腰に顔を埋めた。
いい匂いがする…昔は彼の匂いと血の匂いが混じり危険な香りを醸し出していたが、今は珈琲の匂いが僅かに鼻を掠めている。
それだけで4年半という期間を実感させられた。
アッ…しんど…。
「君は変わらないねぇ」
諦めたかのような流し目で此方を見る治君の色気よ!
推しは4年経っても推しだった。
駄目だ、無理。尊い。
『治君は色気がムンムンだね!素敵だね!格好良くて可愛くて最高だね!!』
嗚呼、この治君を未だ写真に収めていない自分が怨めしい。
身長も予想通り180を超え、昔よりも大人びた推しの姿を目で存分に堪能すると名残惜しくもゆるりと手を解いた。
『愛らしい店員さん、このお金で治君のツケは足ります?未だいるのならありますけど』
「いいえ、十分すぎるくらいです!お釣りは…」
最初こそあんぐりとしていた女性店員はニッコリと笑って答えてくれた。
切り替えが早いようで何より。
『残りは治君のこれからの前払い、ということにしておいて下さいな』
「やったぁ」
『ついでに言うと先程治君がよく行くお店でのツケは全額支払ってきました!これからは定期的に周るから気にせずお買い物を楽しんでね』
「…そこ迄色々されてると寒気がするね」
流石治君、といったところか探偵社員の太宰治の情報は限りなく少ないものだった。
何処にいた、という情報は少なくないが何をしていたというのは中々見つからない。
ポートマフィアの元幹部太宰治の情報なんて、綺麗さっぱり最初からそんな人物いませんよ〜とばかりのまっさらであった。
故に、よく行く店全て周りツケがあった所にお金をポンポン置いて来たが意外にも探偵社員となった治君は随分とエコノミーらしい。
鞄一杯に敷き詰めたお金は未だ余っていた。
『此度の人虎の件だけど芥川の担当の下、通信保管室に記載されているから良かったら顔を出してくれると嬉しいよ』
「いいのかい?情報漏洩で処分されてしまうかもしれないよ」
分かってるくせに聞いてくる彼に私はうっそりと微笑んだ。
『私はその程度で頸をら斬られるほど安い駒じゃあないからね』
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ユウリ(プロフ) - ねころさん» 個人的に私もそこ大好きなので(自画自賛)同じ人が居て嬉しいです〜(^^)祝日の間にあと一、二話更新出来たらなぁと思います (2019年9月16日 7時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
ユウリ(プロフ) - 神皇音雅樂さん» 指摘ありがとうございます!深夜テンションで書いていたので全く読み返した時と分かりませんでした……ストーキング夢主をこれからもどうぞよろしくお願いします(( (2019年9月16日 7時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
神皇音雅樂(プロフ) - 夢主の太宰への一途さが可愛すぎます。これからも更新頑張ってください。あと、32話の"人の話"が"人な話"に、"首領の話"が"首領の話し"になっています。訂正お願いします。 (2019年9月16日 7時) (レス) id: d0313e3af1 (このIDを非表示/違反報告)
ねころ(プロフ) - 潔い…しゅき…のところが好きすぎて見返しては頬が緩むのを感じます。更新楽しみにさせて頂いております。 (2019年9月16日 0時) (レス) id: ef39eb690c (このIDを非表示/違反報告)
ユウリ(プロフ) - コメントありがとうございます!応援して頂けると本当に励みになりますm(_ _)m (2019年9月10日 18時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユウリ | 作成日時:2019年8月12日 13時