【文豪ストレイドッグス】太宰治に貢ぎたい

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無惨にも破壊され捻れた扉を冷ややかな目で眺め溜息を零した。


今日、武装探偵社へ乗り込む作戦提出はされていない。

こんな規律のなっていない行動は道端に転がるチンピラ風情と何等変わらないじゃないか。


「失礼。探偵社なのにアポイントメントを忘れていたな…それに、ノックも」



この声は、広津さんか。

黒蜥蜴がこうも簡単に動かされた。
詰り、芥川かそれに連なる誰かからの命令。



「まあ、大目に見て呉れ。用事はすぐに済む」



「俺の後ろへ」


銃を構えたクローンかなにかなの？と思いたくなる程そっくりさんな黒服達が探偵社へ入り込み国木田さんに庇われる。

何て良識のある人。嗚呼、彼の爪の垢を芥川や暴力脳な奴らに煎じて飲ませてやりたい。




「…！貴方は」



チラリと国木田さんの影から顔を出すと広津さんと目が合う。

彼が部下に待て、と制ししようとするが時すでに遅し。
幾つもの銃弾が探偵社を襲った。




ーーーが、




「全く、これを直すための費用がどれ程かかるか…」


「あはは、それに今回国木田さんですもんね！お疲れ様でーす」


「言うな賢治、胃が痛い」


「さァて、活きが良いのが来じゃアないか」



反応は様々、然し一つだけ共通してあることが全員無傷だということ。

勿論、後ろに隠れていた私も。



さてさて、何分で片付くのだろうね。これは。





そう思いながらやられていくであろう同僚達を顧みることなく私は静かに部屋を抜け出した。









『さ、て、とっ！そろそろ行くかな』






下へ降る階段をルンルンな気持ちで降りて私は喫茶店の扉へ手を伸ばした。







◇◆◇





「遂に私は生きる意味を見つけたのです。
私は、貴女と心中する為に今日まで生きてきたのです」


甘いテノールの声が喫茶店の扉を開けた途端聴こえた。


嗚呼、この声だ。

この声を聴く為に私は此処迄来たのだ。


「お一人でどうぞ」


「お一人で心中は出来ません」


フラフラと声のする方へ引き寄せられる。

物静かなマスターがいらっしゃいませ、と静かに告げた。




「所で太宰さん、ちゃんと生命保険には入っているんですか？大分溜まってますよ、うちのツケ」





『そのツケ、全額お支払い致します』




ドンッ、と机に札束が乗せた。




甘栗のような瞳が、此方に向けられる。






「おや、久しぶりだねぇ」




嗚呼、私はこの姿を見る為に生まれてきたのだろう。

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