35 ページ37
『…あの野郎ゥ!!』
私の怒声が執務室に響く。
ビクリ、と報告しに来た部下が震えた。
『単身で白鯨に乗ったァ??
…嫌…分かってたよ…彼奴は平気で其れをやる…』
グゥ、と頭を掻きむしりたくなるのを我慢して机に突っ伏した。
「津島さん…我々はどうすれば…」
『放置!
知らん、この際派手に暴れて貰いましょう!』
これ以上芥川の尻拭いは御免である。
よし、これは部下たる樋口さんにやってもらおう。彼女なら大好きな先輩の尻拭いが嬉々としてやるでしょ。
「だ、大丈夫なんですかぁ…?」
『大丈夫です、何か不都合があれば私が出ます』
その言葉にホッと胸をなで下ろした部下に下がる事を許可すると一礼して彼女は退室していく。
『もうヤダ〜、誰か芥川の手綱をキツく握っておいてよ〜』
クルクル椅子を回しながら私は溜息を零した。
◇◆◇
結果的に白鯨は橋を通過し海へ沈んだ。
芥川もよく暴れたらしい。彼の暴走も役に立つ事もあるようだ。
然し、治君に肩ポンされただと…?羨ましい!!
『首領、良い朗報がありますよ?聞きます?』
夕焼けに輝く海を眺めながら椅子に座って参ったなぁと溜息を零した首領に私は万遍の笑みを向ける。
「良い朗報?この惨状を打開出来る何かがあるのなら縋り付きたい程だよ」
『残念ながら事実は覆す事は出来ません』
機械仕掛けの白鯨の後処理の殆どはポートマフィアに匙を投げられた。
異能特務課もたまには仕事をして欲しいが、今回ばかりはよく仕事をしなかったと褒めてあげたい。
『今回の白鯨の処理、Qの異能被害の諸々…私が全て処理しておきます』
ピクリと首領が此方を向く。
良いのかい?とばかりの期待を抱く子供のような輝く瞳が向けられる。が、すぐ様疑う様にジッと見つめられる。
『うふ、そんな見つめられると照れます』
「何の企みがあっての事なのかな?」
『企みなんて酷いです!いつも大変な首領に私からの心ばかりの、善意による、気配りですわ』
ニッコーりと私は笑う。
ええ、ええ。なんの裏も御座いませんよ?うふふふ。
「……ありがとう、私も君に仕事ばかり降っているし願いを言いたまえ。出来る限りで叶えよう」
『まあまあ!首領ったら、お優しい…!ここで断るのも失礼ですよね…』
「いや、断ってもらっても…」
そうだ!と私は大袈裟に手を合わせる。
『お恥ずかしながら首領に叶えて頂きたい事が…』
計画通り。
私は心の中でそっと微笑んだ。
639人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユウリ(プロフ) - ねころさん» 個人的に私もそこ大好きなので(自画自賛)同じ人が居て嬉しいです〜(^^)祝日の間にあと一、二話更新出来たらなぁと思います (2019年9月16日 7時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
ユウリ(プロフ) - 神皇音雅樂さん» 指摘ありがとうございます!深夜テンションで書いていたので全く読み返した時と分かりませんでした……ストーキング夢主をこれからもどうぞよろしくお願いします(( (2019年9月16日 7時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
神皇音雅樂(プロフ) - 夢主の太宰への一途さが可愛すぎます。これからも更新頑張ってください。あと、32話の"人の話"が"人な話"に、"首領の話"が"首領の話し"になっています。訂正お願いします。 (2019年9月16日 7時) (レス) id: d0313e3af1 (このIDを非表示/違反報告)
ねころ(プロフ) - 潔い…しゅき…のところが好きすぎて見返しては頬が緩むのを感じます。更新楽しみにさせて頂いております。 (2019年9月16日 0時) (レス) id: ef39eb690c (このIDを非表示/違反報告)
ユウリ(プロフ) - コメントありがとうございます!応援して頂けると本当に励みになりますm(_ _)m (2019年9月10日 18時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユウリ | 作成日時:2019年8月12日 13時