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幸せな時と言うのはあっという間に過ぎるものである。
私は、昨日の出来事を思い出して頬が緩んだ。
「昨日は楽しかったかい?」
『当たり前でしょう!嗚呼、治君と一緒に街を回れるなんてこれ以上無い程の御褒美!』
首領室で、樋口さんの来訪を待つ間頬を緩ませる私に首領は微笑んだ。
「全く、敵組織の社員と逢引なんて本来なら頸だよ?」
『あはは、今まで私の教育に注ぎ込んできた時間と今回の件を比べて不要と判断されるならどうぞ?』
齢10歳の頃から首領に引き取られ、裏社会での生き方、医療、学問、諸々を私に教育してきた時間は長い。
そこに掛けた労力と、時間は膨大であり何より私という存在をその程度で捨てるのは余りに不合理である。
「それを言われると耳が痛いねぇ」
『人選ミスは自業自得でどうぞ』
ははは、と二人の笑い声が執務室に木霊した。
◇◆◇
昨日、私と治君が逢引してる間芥川は人虎の捕獲に向かっていたそうだ。
そこまでは良いだろう。
然し、話を聞けば聞くほど彼は懸賞首を生け捕りというより死没させようとしていた様に見える。
もし、これが私の想定ではなく事実ならば立派な命令違反。
全くもって不快極まりないし、何より…
「下顎骨剥離骨折。前頭骨胸椎裂離。頸部靭帯損傷。上腕大腿筋断裂。全身熱傷…そして昏睡」
よくもまぁ、そんな重症で易々と帰ってきたものである。
「派手に壊されたものだね。
任務失敗の代償というわけだ…このまま意識が戻らないかもしれないね」
首領がにこやかに話を紡いでいく。
緊張した面持ちで樋口さんはその言葉を聞いた。
「人虎の捕獲に失敗し、輸送船を沈めたけど、頑張ったから良いじゃないか。
頑張りが大事、結果は二の次だ」
何という皮肉。
被害を出すだけ出して任務失敗なんて私的には笑えない大問題だ。
エリス嬢が床にお絵描きをしているのを見てフッ、と微笑んだ。
『とっても素敵な絵ですね』
「でしょう!」
芥川の頸チョンパ。
自慢げに胸を張るエリス嬢にふふ、と笑い返した。
「いいかね樋口君。
マフィアの本質は暴力を貨幣とした経済行為体だ。資質であり負債だよ」
「しかし、芥川先輩はこれまでの任務で多大な成果を…」
「確かに芥川くんは優秀だ。彼の暴力性は組織でも抜きん出ている。
…では、君は?」
ーーー君は、自分がこの仕事に向いていると思ったことはあるかね?
性格が悪いな、とエリス嬢の傍らで首領を眺めた。
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ユウリ(プロフ) - ねころさん» 個人的に私もそこ大好きなので(自画自賛)同じ人が居て嬉しいです〜(^^)祝日の間にあと一、二話更新出来たらなぁと思います (2019年9月16日 7時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
ユウリ(プロフ) - 神皇音雅樂さん» 指摘ありがとうございます!深夜テンションで書いていたので全く読み返した時と分かりませんでした……ストーキング夢主をこれからもどうぞよろしくお願いします(( (2019年9月16日 7時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
神皇音雅樂(プロフ) - 夢主の太宰への一途さが可愛すぎます。これからも更新頑張ってください。あと、32話の"人の話"が"人な話"に、"首領の話"が"首領の話し"になっています。訂正お願いします。 (2019年9月16日 7時) (レス) id: d0313e3af1 (このIDを非表示/違反報告)
ねころ(プロフ) - 潔い…しゅき…のところが好きすぎて見返しては頬が緩むのを感じます。更新楽しみにさせて頂いております。 (2019年9月16日 0時) (レス) id: ef39eb690c (このIDを非表示/違反報告)
ユウリ(プロフ) - コメントありがとうございます!応援して頂けると本当に励みになりますm(_ _)m (2019年9月10日 18時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユウリ | 作成日時:2019年8月12日 13時