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漸く着いた扉の前でドアノブに手を掛けようとしたその時中原君に軽く制止された。


あくまで軽く、なので力ずくで開けようと思えば開けられるが私は幹部補佐。

今となっては誰の補佐役でもないが、幹部たる中原君よりは立場は下である。


「太宰と話があるんで、Aさんは此処で待ってて下さい」


『そ、…そんなぁ』


楽しみにしてたのに…仕事だってこの時の為に死ぬ気で終わらせたのに…!!
思わず泣きそうになる私に中原君は慌て出す。

そんな狼狽えるなら言わなきゃいいのに…と思いながらこのまま行けば押し通せるのでは?と細く微笑むが見ないように帽子をクイッと下げられた。




「すんません」



謝るくらいなら、止めないで呉れよと思うが仕方ない。
幹部の命なら、私に逆らう権利はない。



『あんまり遅いと突撃しますからね!』



ムッスリと頬を膨らませ階段に座る。
そんな様子を見た中原君がクスリと微笑んだ。



ヒラヒラと片手を挙げて彼は、中へ入っていった。





『きちんと命令てして言えばいいのに…』





強く言えないのは、彼が私に惚れてしまったのが原因だろう。



難儀な子である。


少し、目を閉じてみる。

18歳の時、初めて会った治君と同い歳という少年は随分と顔に出やすい子であった。




◇◆◇





「君が新しく入った中原君、だね?私は津島Aです、よろしくね」


首領によって、ポートマフィア内の簡単な道案内を頼まれた私は最近覚えた愛想笑いを少年に向けた。

「…な、かはらです…」


惚けた彼を見て私は直ぐに理解できた。



悪いが、私は鈍感では無いし好意を向けられ一喜一憂する程可愛い性格をしていない。
冷めた瞳で頬をうっすらと染めた少年を眺めた。



『それじゃあ、案内するから着いてきてね』






そう言って歩き始め直ぐに治君にばったり出逢い、何時もの様に抱き着いたのを見て中原君が絶叫したのは驚いたものである。

因みに、治君は爆笑していた。




◇◆◇





大分時間が経ったが、一向に中原君は戻らない。



『もう、駄目だ…遅過ぎる!』



カツリ、と靴の音を上げて私は扉を開いた。
薄暗い部屋の中。
少し湿気っていて陰鬱な部屋だ。
こんな場所に治君を長居させるなんて…


すぐ下の方で中原君が見えたが、様子がおかしい。


「に、…2度目はなくってよ!!」



『ん?』



ギギギ、と中原君の首が此方を向く。



「……ふっ、ははっ」


暫くの沈黙を破ったのは治君の笑い声だった。

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ユウリ(プロフ) - ねころさん» 個人的に私もそこ大好きなので(自画自賛)同じ人が居て嬉しいです〜(^^)祝日の間にあと一、二話更新出来たらなぁと思います (2019年9月16日 7時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
ユウリ(プロフ) - 神皇音雅樂さん» 指摘ありがとうございます!深夜テンションで書いていたので全く読み返した時と分かりませんでした……ストーキング夢主をこれからもどうぞよろしくお願いします(( (2019年9月16日 7時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
神皇音雅樂(プロフ) - 夢主の太宰への一途さが可愛すぎます。これからも更新頑張ってください。あと、32話の"人の話"が"人な話"に、"首領の話"が"首領の話し"になっています。訂正お願いします。 (2019年9月16日 7時) (レス) id: d0313e3af1 (このIDを非表示/違反報告)
ねころ(プロフ) - 潔い…しゅき…のところが好きすぎて見返しては頬が緩むのを感じます。更新楽しみにさせて頂いております。 (2019年9月16日 0時) (レス) id: ef39eb690c (このIDを非表示/違反報告)
ユウリ(プロフ) - コメントありがとうございます!応援して頂けると本当に励みになりますm(_ _)m (2019年9月10日 18時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユウリ | 作成日時:2019年8月12日 13時

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