1呪目:かつての約束 ページ3
千景side
あの人は昔から、よく人を惹きつけました。まるで誘蛾灯に引き寄せられる虫のように、多くの人間を引き寄せました
『零さま』
雛鳥が親鳥に餌をねだるように、立派な大人が幼い子どもの言葉を黙って聞いてるその光景は異様であり
『そろそろお稽古の時間です。遅くなると旦那さまたちがお怒りになられますよ』
零「おう、いま行く。ありがとな千景」
「そんな無責任が許されていいのか」と、幼少の身ながら私は憤りを感じていました
零「いつも悪いな、俺一人だとどうにも言い出せなくて」
『大したことではありません。それと、ああいった連中には一発ガツンと言った方がいいのです。それで去っていくならそれまでの凡人だった、それだけですから』
零「相変わらず手厳しいな千景は...あいつらのこと、そんなに嫌いか?」
『嫌いです、大嫌いです。人間なんて手のひら返しが得意なだけの生き物です。それまで世話になっていた相手でさえ、少し世界とズレが生じれば弾圧する...あなたには、あのオルレアンの聖処女のようになってほしくない』
零「ジャンヌ・ダルクか...じゃあもし、俺がジャンヌ・ダルクのような最後を迎えそうになったら、どうする?」
その言葉にほぼ反射的に、怒鳴るように言っていました
『全てを殺してでもあなたを救います。それが無理ならあなたとともに業火に飲まれましょう。あなたとなら地獄に落ちようと、私に悔いはありません』
私の言葉にポカンとしていた零さまは、やがてなにが面白かったのかケラケラ笑い出しました
それは、あの信者どもに見せる浮世離れしたものではなく年相応の子どもらしい笑顔でした
ひとしきり笑い終わった零さまはふと真面目な顔をすると左手を差し出して言いました
零「...じゃあ、約束な。「ずっと俺の味方でいろ」」
『もちろんでございます』
零「俺だって万能じゃない。だから、「俺の大切なものを守れ」」
『承りました』
返事をしながらその場に膝をつき、かしずいていると泣きそうな声が頭上から響いた
零「...最後まで、「ずっと、一緒にいろ」」
その言葉に驚いて顔をあげれば、どこか泣きそうな顔をした零さまがそこにいました
『...イエス・マイロード。この命尽きるまで、あなたにお仕えいたします...私は、あなたの執事ですから』
そう言って手の甲にくちづければ、零さまは心からほっとしたような笑顔を私に見せてくださいました
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『ゴホッゲホッ!』
カランコロン...
その約束をした三年後、私の身体から宝石が吐き出された
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ぬん(プロフ) - 世界観がとても好きです。更新楽しみにしています! (2019年1月6日 23時) (レス) id: bc5dc7d709 (このIDを非表示/違反報告)
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