第７２開花:あるはずのない ページ4
茨side
夢を見た。それは、いつもの戦場の記憶でも今朝の弓華の首を絞めたときの記憶でもなく
自分の記憶にあるはずのない、平凡な家庭の夢だった
音のする方へと歩いて階段を降り、段々と大きくなる音へ近づく。ハッキリと聞こえるにつれてわかったのは音の正体が包丁でなにかを切る音とやかんで湯を沸かす音だということだった
音の発信源にたどり着けば、そこにはこちらに背を向けて忙しなく動き回る。エプロン姿の女性がいた
顔が見えないが自分より少し年上だということはわかった.....その女性の、正体も
茨「ーーー」
声をかければ、女性は少しだけ動きを止めた後ゆっくりとこちらを向いた
そしてーーーーー
ーーーーー
茨の部屋...
茨「うっ...」
目を覚ませば、そこは自分の自室のベッドの上だった
たしか自分は、廊下の途中で症状が悪化して...あぁ吐いたあとに気絶したんですね。我ながら自己管理がなってないというか...とにかく要反省しなくては
トントントン シュー...
茨「？...」
なぜ夢と同じ音が...？いや寮の部屋でも簡単なものなら作れますが自分の部屋に包丁なんて置いていない...
だるい身体を無理矢理起こして引きずるようにしてキッチンへと向かえばそこには夢と同じ光景があった
.....いたのは、夢の姿より幼いいつもの弓華でしたが
茨「.....弓華」
夢と同じように声をかければ弾かれたように振り向いた弓華は焦った様子で近づいてきた
『茨！？ダメよ起きちゃ！まだ寝てないと！』
未練がましく「しかし...」なんて言えば弓華は聞く耳を持たずに自分を強引にベッドへ戻した
『いつまでも来ないからどうしたのかと思ったら倒れてて...本当に驚いたんだからね？急いで兄さまたちに連絡して事務所とも相談して...』
茨「ははっ...すみませんね、こんな最低野郎のためにみなさんの時間を使わせてしまって」
いつものようにそう言えば弓華はため息をついて言った
『あんたのその必要以上の自己卑下、本当に「きらい」なんだけど...まぁ、今回は見逃してあげる』
「お粥を持ってくるから待ってて」と言って弓華はキッチンへと戻っていった
.....前に言われた「きらい」というのは、自分自身のことではなかったんだとホッしている自分がいてそれを誤魔化すように布団を頭まで被った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カトレヤ(プロフ) - 富士急愛好家さん» コメントありがとうございます！番外編の件ですが少し考えさせていただきます(名前変えましたが本人です) (2018年8月31日 13時) (
レス) id: cdce025386 (このIDを非表示/違反報告)
富士急愛好家(プロフ) - この作品大好きです！もしよかったら茨と弓華の恋模様の番外編もお願いします！ (2018年8月16日 10時) (レス) id: fdeaaa360a (このIDを非表示/違反報告)
フラン(スマホ)(プロフ) - 完結おめでとうございます。この作品が完結してちょっぴり寂しいです。更新されるたびに、楽しく読んでました。完結本当におめでとうございます。ほかの作品でも、頑張ってください。 (2018年5月30日 7時) (レス) id: a7d0bc1538 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
