大正妖怪浪漫道 (ページ25)

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２２歩目:人間嫌いの海竜ページ25

時雨side

千「時雨、奏汰は一体どうしたんだ？あんなことを言う奏汰ははじめてなんだが...」

『俺からしたらはじめてでもないがな、そもそも奏汰は元々人間嫌いだ』

千「そうなのか！？」

帝都へと向かう空路の途中、千秋に俺の知っている奏汰のことを話す。視える人間は貴重だ、だからこそ人間と妖怪の「繋がり」になってほしいと、俺は思う

『人間は海を汚すからな、だがそんな奏汰が唯一心を許した人間がいた。...それがまだ人間だった頃の薫だ』

千「羽風が元々人間だったことは知っていたが...そんなに長いつき合いだったとはなぁ」

『奏汰のことが視えるのは薫だけだったし、薫の目を理解してくれるのは奏汰だけだったからな、二人は無二の親友だった...だが、幸せは長く続かなかった』

いまからざっと百年前、あの町...昔は漁村か、それが一度滅んだことは知ってるだろ？津波が原因だということも

あれをやったのは奏汰だ。もちろん理由はある

村のくだらん大人が、薫を殺したからだ

ああ経緯がわからんか...わかった一から説明する

当時村には「二十年に一度、海竜に生贄を捧げる」っていう、奏汰がそう要求したわけでもないのにそんな決まりがあったんだ

薫はそれに選ばれた。奏汰のことをよく知っている薫は自分の親や大人たちを「海竜は生贄なんて望んでない」と説得しようとした

だがその言葉は「生贄になりたくないからウソをついている」と受け止められ、薫はその場で撲殺された...困ったのはその連中だ。気絶させるつもりで殴ったのに死んじまったんだから

だがバカなそいつらは「どうせ生贄になって死ぬんだから」と、生贄の祭壇に薫の死体を捧げた...

薫が死んでいることはすぐにわかった奏汰は当然怒り狂い、本来の竜の姿になり村を滅ぼした...そんで死んでから時間のたってなかった薫を自分の眷族にしたってわけだ

千「...そういうことだったのか」

『あぁ、だから奏汰は海から出ない。人間と関わりたくないからだ...ま、お前は別みたいだけどな』

いまでも覚えてる。薫の死体を抱きかかえて泣き叫ぶ奏汰の姿と、その言葉を

奏「ぼくは...っ「にどと」にんげんのまえにすがたを「あらわしません」...！もう、にどとっ...！」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

...なぁ、奏汰。たしかに人間は愚かで、妖怪の大切なものを傷つけ、奪うことしかできない存在だが、

それでも...愛おしいと思う存在なんだよ。お前が薫を愛し、慈しんだように

泉「Zzz...」

『ｸｽｯ、さっ早く帰ろう』

俺は翼を羽ばたかせ、帝都への速度を上げた