【ツイステ】船長の冒険記Ⅱ (ページ32)

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海賊が奏でる協奏曲③ ページ32

船は空の色を上書きされていた。
序章、魔空撃(スカイキャノン)によって雲が逃げ、感心の声と驚いた声を得たが、演出であり故意である。
雲があれば、上書きした時に消えたように見えない。
ある所で不自然に雲が切れていれば、船の輪郭を割出すことなど容易である。

優雅なファーストヴァイオリンの旋律にセカンドヴァイオリンが応える。
寮生たちがバク転して、側転して、ロンダードを決めた時は、さすがに会場のいたるところで黄色い声が上がった。

3年生が炎の輪をくぐり抜け、上空へ水の魔法を湧き上がらせる。
大きな水球から姿を現したのは、先程消えた船である。
船は水があってこそ輝ける。

散った水飛沫が風魔法によって会場へ円を描いて降り注ぐ。
日光に反射して虹が薄くかかった。

現れた船に3年生たちが飛び乗り、交代するように2年生達が剣技を披露する。

最後のサビへ向けて落ち着いたメロディに、華麗な剣技はマッチしている。
木管楽器がノスタルジックに音色を紡ぎ、甲高いグロッケンが音を補う。

船員が林檎取り出し上空に投げれば、船長から時計回りでそれを真っ二つに剣で切り裂いていく。
続いて、反時計回りにオレンジを切る。

見物客は客席から身を乗り出し、称賛の嵐と拍手喝采を彼らに送った。

船は果汁まみれだが、客席からは見えない。
もちろん、後で掃除だ。

シンバルがラストフレーズの始まりを告げる。
全ての楽器がメロディラインを弾き、叫んでいる。
軍歌のようにスネアドラムが加速し始めると、それぞれの音が加速し膨れ上がっていく。

炎が巨大な球体となって船の航路を邪魔をする。

｢荒波は怒りを落とす

荒波は碇を外す

『従順な荒波(アズ・アイ・ウィッシュ)』！｣

周りを白い星、無属性の魔法が飛び交う。
誰かの思う通りに操られているように大空を鳥のように羽ばたいている。
右と左で無属性の魔法エネルギーが残像のみを残す。

シンバルが一段と大きくなる。
右の魔法が炎の球体へぶち当たる。

先程よりも大きいシンバルが鳴り響く。
左の魔法が炎の球体へぶち当たる。

加速し続けるスネアドラムにティンパニも加わり、激しく華やかな金管楽器と弦楽器、高めの木管楽器が全ての音を合わせて曲を創り上げていく。

一筋の水が龍のように空を泳ぎ始める。
寮生たちの水魔法が龍を造り上げ大きくさせる。

最大級のシンバルの音が鳴る。
龍は天から落ちる稲妻のように急降下、炎を真っ二つ割り、無数の火の粉が飛び散った。