秘密裏の電話 ページ44
『移動はし終わったか?』
ジャミル「お気遣い、ありがとうございます。」
受話器の先のスカラビア寮副寮長は、こちらへの警戒心をマックスにしている。
別に警戒していることに悪いこともないが(もし同じ立場だったら俺様も同じことをするだろう)、あまりの態度に笑いがこみあげてくる。
『早速本題に入りたいんだが、俺様には監督生の危機がわかるようになっている。
ジャミル「なる、ほど。」
あまり納得していないようだ。
黙り込んでしまってたが、彼の結論は手に取るようにわかる。
そんな魔法は聞いたことがないし実現不可能だろう、ならば、おそらくユニーク魔法の類だろう、と。
『もう言いたいことはわかるだろうな?』
ジャミル「俺たちが何か監督生を危険に晒した、ということですか?」
『あぁ、そうだ。』
『貴様がアルアジームに燃やし続ける怨念は分からなくもないが、監督生になにかするようならば...その炎で貴様を焦がしてやろう。』
実に短い会話だが、電話はすぐ切れた。
今頃、顔に青筋を立てて"監督生なんて招き入れなければよかった"と、後悔しているだろう。
「あー、A・ジェームズさん!もう、勝手に居なくならないでよ!広いから探すのが大変なんだから!」
可愛らしいロボットがお迎えに来てくれたようだ。
スマホをスリープ状態にし、ジャケットに入れる。
「レテの河の準備は出来てるから急いで!」
無機質な廊下にロボットと2人、列になって歩く。
学園へ戻れば、今日電話したことは忘れているだろう。
…。
…………………。
…………………………………………………………。
バイパーさんが去るのを確認すると、カリムの状況を見極めないといけないと思い、その姿を探した。
しかし、私の友はもうどこにもいなかった。
寮生を置き去るかのように消えていった寮長。
どこか船長と似ているところがあり、苦々しく思った。
くたくたに疲れて談話室に寝そべっている彼等から、期待のまなざしをひしひしと感じる。
たしかに、私ならカリムに物申せるかもしれないが、肝心のカリムがいないのだから仕方がない。
スミス「あ、監督生さんと、それからグリムさん。来るのが遅くなってしまい、すみません。」
グリム「俺様はユウのおまけじゃないんだゾ!」
切れの良いツッコミは聞こえたあとに、私は誰なのかと半ば強制的に自分のことを話さなければならなくなった。
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作者名:あかまる | 作成日時:2022年5月21日 17時