戦終わりの気遣い ページ14
膨れ上がる魔力量にわずかばかり焦りを感じていた。
オーバーブロッドすること自体が珍しく、生まれて初めて対面したのだ。
適当に魔法を打つように指示しているが、果たしてそれが最適解なのかはわからない。
スミスならば、微々たる足の揺れに気づいているだろう。
もとより、私は深く考え込まず直感で即決する人間であり、それでいて臆病なのだ。
苦しそうに魔法を打つリドルの動きが鈍ってきていることが分かる。
多少は長い戦いになると踏んだが、ここまで彼がしぶといとは思わなかった。
…いや、少し考えればわかったことだろう。
なにせ、相手は桁違いの魔力とそれに準ずる威力を持ち合わせているのだ。
見くびっていた私に落ち度がある。
ｽﾐｽ｢船長、そんなに落ち込まないでください。｣
スミスを見れば、眉を下げつつも穏やかに笑っていた。
ほんのり赤く染まる少し大きい鼻が、脱力感を誘う。
さらりと人を助けるところがスミスのいいところともいえるだろう。
ﾘﾄﾞﾙ｢僕こそが絶対に正しいんだ！！でなければ、一体なんのために…｣
トレイがその言葉に反応した。
昔、トレイから何となく聞いた幼い頃にあった出来事が未だに忘れられないのだろう。
部外者が口出しするものではないが、なにか解けぬわだかまりがあるのならば手助けしてやりたい。
リドルの炎魔法に水魔法で対抗する。
溜めていた水魔法攻撃の威力は私が想定していたよりも遥かに高く、寮生たちを驚かせてしまったようだ。
ﾘﾄﾞﾙ｢僕が間違ってた…？そんな訳ないよね、お母様…？｣
零れ落ちた悲痛の叫びは、私の心を揺さぶるような威力があったが、気にする事はないと気を取り直す。
倒れ込むリドルにトレイが近寄った。
どうやら、ハートの女王サマの自我が戻ったようだ。
トレイもケイトも安心した顔つきでリドルを見守る。
草木の焦げた匂いが鼻を刺激した。
ｸﾛｳﾘｰ｢良かった。正気を取り戻していますね。｣
学園長も気持ちばかり微笑んでいる。
病人は安静にすることが良いと聞くが、今回ばかりはエースが横入りしたことによって許されなかった。
空気は読めないが話の筋は通っている。
ｸﾞﾘﾑ｢まったく。ストレスを溜めるとろくなことがねぇんだゾ。｣
あぁ、その通りだな。
ストレスを溜めることによって綺麗に整備されていた植木や赤く染った薔薇が、土を盛り上げて倒れ込み美しさを散らしてしまうのだから。
それは、
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作者名：あかまる | 作成日時：2022年5月21日 17時
