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体にかかる衝撃。浮遊感。鋭い痛みに、鈍い痛み。
全て理解が追いついたのは、そう早いものではなかった。
喉の奥から吐瀉物が出るような気持ち悪い感覚。
乱れた呼吸を、整える。
目の前でケタケタと玩具で遊ぶように楽しむ呪霊に、私は倦怠感を覚えた。
ああ、面倒だな。帰りたいな。めちゃくちゃ強いじゃんこの呪霊。
吹っ飛ばされた衝撃で瓦礫や大きな岩に下敷きにされた私は空を見上げてそう思った。
一級?それとも特級?もうどっちでもいいや。
先程まで笑顔だった私の補助監督も、私と共に遠くへ吹っ飛ばされて安否確認もできていない。
助けに行かなくちゃ。
そう思っても、日中は御家に出向いたことが原因の疲労と、現在起こった全身の痛みで中々起き上がることはできなかった。
正直、ここで死んでしまうのはアリだ。
卒業後、成人後、ずーーっと呪術師だなんて死んでも嫌だね。
しんどいし、辛いし、悲しい。
どうせなら生まれ変わって、もっと綺麗な人になりたい。
布団のように私の上に乗った岩を避け、重たい身体を無理やり起こす。
本当に今回ばかりはヤバイかもしれない。
片脚はあるべき方向へ向いていないし、多分というか絶対折れてる。
右腕は神経も通っていないくらいの損傷だった。
一撃でこれか〜と思うと、私の勝利は絶望的だった。
この世に未練がない訳では無い。
今なら五条の小学生のような暴言も、硝子の眉間に皺を寄せそうなタバコの臭いも、とても愛しくて、なんでも許せる気がする。
一番の気がかりは、傑である。
もし、私が死んだらどうなってしまうのだろうか。
傑が愛した元婚約者が亡くなった時のように、酷く、地獄へ落とされたような顔をするのだろうか。
「自惚れも大概だな」
久々に出した大嫌いな声は、酷く枯れていた。
私は、傑の元婚約者のように綺麗でも可愛くもないし、今だって補助監督放ったらかしで重たい岩の布団で眠ってしまいそうだった。
巫山戯るのも大概にしろ、最低女。
「はー、家帰って寝たい。テレビ見たい。
今日好きだったドラマの最終回だったんだけど!」
血が混ざった声で、もう彼女に似た要素もない汚い声で、ただ笑った。
「……最期の呪術師活動頑張っちゃうぞー」
叶うのならば、傑の声が聞きたい。
また、私に優しい声で、私を安心させてくれ。
残酷にも、私の頭に残ったのは彼の首元にある指輪が重なり合う音だった。
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rix(プロフ) - 尊さん» お待たせ致しました!只今公開致しました〜!!犬小屋から出てきてくださ〜〜い!!!!お家に帰りますよー!! (2021年3月27日 9時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
尊 - rixさん» なぬ、神様の作品なら絶対読みます!犬小屋で地団駄踏んで待ってます! (2021年3月24日 17時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - 尊さん» コメントありがとうございます!わー!そう言っていただけると嬉しいです(;;)休日に新作出すと思うので是非そちらもお読みいただけると嬉しいです笑 (2021年3月24日 17時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
尊 - めちゃくちゃ感動しました!あなたは神作の神様だったですね、一生崇拝します (2021年3月24日 14時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!よかったです!!笑自信結構なかったのでそう言っていただけると嬉しいです!! (2021年3月22日 13時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:rix @元荼毘 | 作成日時:2021年2月28日 14時