彼が昔の婚約者を忘れられない話 【呪術廻戦】

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最初は大きなピアスをつけていて、制服も形がおかしいし、私のクラスメイトはヤンキーしかいないのかと思うくらいだったが、話してみれば言葉遣いは丁寧で、とても優しい人だった。

私を虐める五条に傑はいつだって止めに入ってくれたし、アフターケアも欠かさずに私を気にかけてくれた。

自分を気にかけてくれた人物が今の今までいなかったため、とても嬉しかった。

たまに御家へ赴きヘトヘトになった私を気にして私の好きなココアを買ってきてくれた時だってあった。

御家のことについては話も長くなるし、良い話では無いため夜蛾先生以外には伝えていない。それにも拘わらず、傑は何も聞かずに宥めてくれた。


そうして、こんなに良くしてくれる傑にいつしか恋心を持つようになった。

人を恋愛感情で好きになるのは初めてであった。

私は人にベラベラと自分の感情、それこそ恋の悩みを話すような性格ではないし、1人で抱え込んだ。


そして月日が経ち早一年。

ここまでで私がわかったことは、傑の優しさは私へだけのものでは無かったということである。

傑に彼女が出来た。一個年下の。

今まで恋愛経験がなかったため、私は勘違いをしていた。

傑の優しさは傑自身が持ち合わせた個性のひとつで、私へのものだけではなく、傑にとって当たり前であったのだ。

私の方が先に傑を好きになったのに。私の方が傑のこと知ってる。

私は誰にも相談することができず、ただ負の感情を募らせていた。


しかし、傑の彼女は傑に見合った女性であった。

あの性格がねじ曲がった五条も心を開き、言わば注目を集める存在。私とは正反対な女性だった。

途轍もない劣等感を感じてしまった。

人生最初の恋にして最初の失恋があってからか、私の呪力操作も不安定になってしまい、御家へ帰った時には無能だと頬を打たれた。

少しだけ、口から血が出た。

その時の顔を顰めてしまいそうな鉄の味は、今でも鮮明に覚えている。

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