検索窓
今日:3 hit、昨日:7 hit、合計:277,130 hit

12 ページ13

彼女はあの後からまだ目を覚まさない。

「やあ、おはよう。今日は雪だよ、初雪だね。

外で一緒に見たかったね。」

あれから3ヶ月が経った。

硝子のおかげでもうほぼ身体の傷は治ったというのに、彼女は静かに目を閉じるだけ。

私は彼女の目にかかる前髪を分け、呼吸の音を確認する。

以前は死にかけの金魚のような浅い呼吸であったが、今となっては柔らかな呼吸。

彼女の髪も以前より少しか伸び、生きているという実感が持てたので安心した。

「これからもっと寒くなるらしい。あっという間だね。前までは暑苦しいくらいだったのに。」

返答は、もちろん無い。

「昨日、悟が珈琲を飲んだんだ。あの甘党な悟がね。もちろん直ぐに吐き出していたさ。」

私はただ、他愛のない話を独り言のように呟くだけ。

たまに君が寝ていることをいい事に弱音を吐くことだってあった。もし君が起きて聞いていたら情けない男だと幻滅するだろうね。

「そうだ、この前君の好きそうな店を見つけたんだ。

その店を見た瞬間、君を真っ先に想ってしまった。目が覚めたらそこへ行こう。」

食事もできず、針から栄養を摂取している彼女の身体は以前より格段と細くなり、日に当たっていない残った白い腕もすぐに崩れそう。

「君に伝えたいことが山ほどあって、もう私一人では抱えられそうにもないんだ。

早く一緒に背負ってくれないか」

私は彼女の手を、祈るようにして握った。

「私を一人にしないでくれ」

私の胸に突き刺さった度重なる愛した人の不幸。

美しく愛らしい髪や爪も、死した瞬間不気味なものに変わってしまうことを、私はよく知っている。

何ものも世界を変えられはしない。





「すまないね、また弱音を吐いてしまった。」

私は彼女の手を離し、冷えないよう手を布団の中に入れた。


「……それじゃあ、任務に行ってくるよ。

また明日来るね。」


私はついていけるのだろうか、君のいない世界に。

13→←11



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (705 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1165人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑 , 夏油
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

rix(プロフ) - 尊さん» お待たせ致しました!只今公開致しました〜!!犬小屋から出てきてくださ〜〜い!!!!お家に帰りますよー!! (2021年3月27日 9時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
- rixさん» なぬ、神様の作品なら絶対読みます!犬小屋で地団駄踏んで待ってます! (2021年3月24日 17時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - 尊さん» コメントありがとうございます!わー!そう言っていただけると嬉しいです(;;)休日に新作出すと思うので是非そちらもお読みいただけると嬉しいです笑 (2021年3月24日 17時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
- めちゃくちゃ感動しました!あなたは神作の神様だったですね、一生崇拝します (2021年3月24日 14時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!よかったです!!笑自信結構なかったのでそう言っていただけると嬉しいです!! (2021年3月22日 13時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:rix @元荼毘 | 作成日時:2021年2月28日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。