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「なあ、叶瀬〜」

教室の扉と同じ高さの長身の伊達男が私のクラスを訪れた。

教室の扉、と聞いても大雑把であるから数字を言おう。

2m近くある男が私の教室を訪れた。


「いつになったら美術室来てくれんの?」


この学校であれば、悲鳴嶼先生と天元様しか思い当たらない。

答えは後者だ。


天元様が教室の片方のドアを支配する。

このせいで家のパン屋のバイトが入っていた炭治郎に先に帰られた。

因みに玄弥は部活だ。


「行きません」


「明日は?」

「行きません」

「じゃあ明後日」

「行きません」


私は頑なに天元様のお誘いを断った。


「煉獄のパシリは引き受けるってのに俺のことは断固拒否かよ」


それには理由がある。

天元様と関わる度、期待が募る。

その期待が落胆に変わることを私は知っている。

前世での死が一例である。

別に天元様が悪いと言っている訳では無い。

逆にあれは私が悪かったのだ。

私の力不足で捕まってしまい、天元様のことも考えずに助けを求めていた。

他の妻のことも考えると天元様は正しい判断をしたと思う。


「早く帰りたいんですけど」

「本当に無愛想なやつだな」


私はドアを封鎖する天元様を押し退け廊下へ出た。

彼はパーカーのポケットに手を突っ込みながら帰宅しようとする私の後をついてくる。


「……何でついてくるんですか」

「?気になるから」

当たり前だろう?と私が非常識だというように言った。

「…はあ」

記憶のない天元様から離れようとしているのに、何故ここまでも離れられないのか。

私の為にも天元様の為にも、私達は離れていた方が良いことには変わりないのに。

「なーんか放っておけねえんだよなぁ

やっぱり前会ったことある?」

「ないですって…

ほら、もう教師の業務に戻ってくださいよ」

天元様が私に喋りかける度、私がもどかしさと悲しみに襲われていることを彼は知らない。

私は前世の妻として、今世は天元様の幸せを見守ろう。

そう決めた心が揺らいでしまう。


「釣れねーのー

じゃあな、叶瀬

気をつけて帰れよ」


そう言って私の頭に大きな手のひらを乗せた。

ずっしりと重みのある手なのに、どこか優しさと安心感がある。

前世の懐かしさを感じた。


「女子生徒にお触り禁止です。

捕まりますよ。」


「じゃ」と逃げるようにして帰った。


「…はぁ」


帰り際大きなため息をつく。


記憶があるってのも楽ではない。

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rix(プロフ) - 月乃派さん» ないです! (2022年7月26日 6時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 更新停止ですが、更新待ってます! (2022年1月18日 22時) (レス) @page25 id: 7dc128c7fe (このIDを非表示/違反報告)
月乃派 - 宇髄さんは記憶があるんですか (2022年1月2日 18時) (レス) @page25 id: 2fabf89436 (このIDを非表示/違反報告)
rix @元荼毘(プロフ) - しらとぅさん» 影山飛雄です! (2020年11月27日 18時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
月華 - 更新停止残念です…復活するの楽しみに待ってます (2020年3月22日 2時) (レス) id: 05cb836c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rix@荼毘 | 作成日時:2020年2月29日 11時

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