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目の前には前世で私と同じ天元様の妻だった須磨さん。

そして傍には天元様。


「こ、こんにちは…」


「おーおー、

こんにちは叶瀬」


「え…」


名前覚えてくれたんだ。

彼からしてみれば昨日のあの一瞬会っただけのに。

「なんだ〜?

もしかしてボッチか?

俺と昼飯食うか?」


「宇髄先生!

今じゃその発言、問題になりますよ!」


「そうか?」


「そうです!」


楽しそうに話す二人を目の前にした。

須磨さん、羨ましいな。

私みたいな生徒じゃなくて。

不意にそう思ってしまった。


生徒と教師の関係は、あわや犯罪になってしまうことがある。

天元様との可能性がゼロなのだ。

それに比べ可能性のある須磨さんが羨ましかった。


「私にだって友達いますよ、宇髄先生。

もしかして私と一緒にお昼食べたいんですか?」


ははは、と笑いながら300円を出してその場を去ろうとした。

もう安易に彼に近付くのは辞めよう。

ただ私が虚しくなるだけだ。


「おいおい、待てよ」


だが彼は私の後ろについてくるのだ。


「俺のこと嫌いなの?」


天元様は私の隣に並び、共に階段を上った。


「そんなことないですよ」


私は関心が無いように振りまい、天元様を無視するようにスマートフォンを触った。

正直天元様を無視するのは心が痛んだ。

だがこれで良いのだ。

少なくとも私と天元様は生徒と教師の関係。

それ以上のことは無い。


「なら」


だが彼は私より早く階段を上り、私の行く手を阻むように前に立った。


「俺のこと好きか?」


「っな」


動揺した。

超動揺した。

関心が無いように振りまう私が崩れた瞬間だった。


「お、やっと俺を見た。」


目の前の彼はニヤリと笑っていた。

ああ、嵌められた。

乙女心を遊ぶのは如何なものかと思う。


「叶瀬と初めて会った気がしねえんだけど、どこかで会った?」


「…気のせいじゃないですか?」


前世の記憶が無い彼にとって、これは本当に気のせいだろう。


「そうか」


前世では貴方の妻だった、なんて生徒から言われたらどう思う?

頭おかしいのかと思われるだろう。


「悪いな、こんなこと聞いて」


じゃあな、と言って私の元から離れていく。

その光景が忍から抜け出すあの夜と重なり、少しだけ悲しくなった。


「あ」


だが彼は何かを思い出すかのように私の方を振り向いた。


「いつでも美術室遊びに来いよ、叶瀬!」


あの夜と違うのは、彼が私に笑顔を向けている事だった。

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rix(プロフ) - 月乃派さん» ないです! (2022年7月26日 6時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 更新停止ですが、更新待ってます! (2022年1月18日 22時) (レス) @page25 id: 7dc128c7fe (このIDを非表示/違反報告)
月乃派 - 宇髄さんは記憶があるんですか (2022年1月2日 18時) (レス) @page25 id: 2fabf89436 (このIDを非表示/違反報告)
rix @元荼毘(プロフ) - しらとぅさん» 影山飛雄です! (2020年11月27日 18時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
月華 - 更新停止残念です…復活するの楽しみに待ってます (2020年3月22日 2時) (レス) id: 05cb836c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rix@荼毘 | 作成日時:2020年2月29日 11時

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