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「叶瀬」

あれからというもの


「今日も美術室くるよなぁ?」

私と天元様の間に変わるものは何も無かった。

「…」

「お?無視か?

俺様を無視するとは良い度胸だ」

朝、教室に向かおうとしている最中に捕まって今このような現状である。

あれは夢だったのだろうか。

まるで彼はあの出来事がなかったように振る舞う。

“お前と一生会えない気がしてずっと怖かった。”

あんなことを口にしたのだ。

「なあなあ叶瀬〜

来るだろぉ?」

…口にした当人は親におもちゃを買って貰えなく、駄々をこねている子供のよう。

少しくらい、変化というものがあっても良いのではないだろうか。


「…行きますよ」

「…え?」

「行きますって、美術室。」

今まで“行きません”の一点張りだったが今回は違った。

これが初めて、私が天元様の誘いを断らなかった時である。

彼も聞き間違えたのかと2度聞いた。


「おお…!?

どうした!?」

彼は私が珍しく美術室に行くというものだから案の定驚いていた。

「何誘った人が驚いてるんですか。」

「いや、いつもお前断固拒否だろ!」

彼は目と口を開き、私がおかしくなってしまったというような顔をしていた。

「…気が変わったんです。」

行くと言ったのにも理由がある。

私が天元様の変化を求めているのも一理あるが、

天元様との他愛のない話が好きだからだ。

ただの私情だ。

あの時が私を幸せにさせた。

彼氏という存在がいるのに他の男に右も左にも転ぶ女の気持ちが今ならわかる気がする。

一時的な快楽だけで、これから幸せになることはない。

自分を不幸にさせていくだけ。

そんなことはわかっている。


「可愛げがねえなぁ

俺のことが好きだから〜とでも言えば良いのに」

「誰が言いますかそんなこと」

彼はとても素敵な人だ。

前世の妻である私が保証する。

いつかきっと、素敵な女性と結ばれる。

それは私を除いた前世の妻三人の何れかかもしれない。

前世では私よりも長く天元様と居たのだ。

有り得ない話ではない。

到底私では歯が立たないし、その前に私は生徒だ。

歳も離れ、本人からも“生徒は対象外”と言われた。

どうか、彼の幸せが訪れるまでの少しだけの間でも一緒に居させてほしい。


「またあとで。」

「おう、待ってる」


彼は子供のように快く、曇りのない笑顔を見せて私に手を振った。

この笑顔で今日も一日、頑張れる気がする。



しかし


今日、私が美術室に行くことは無かった。

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rix(プロフ) - 月乃派さん» ないです! (2022年7月26日 6時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 更新停止ですが、更新待ってます! (2022年1月18日 22時) (レス) @page25 id: 7dc128c7fe (このIDを非表示/違反報告)
月乃派 - 宇髄さんは記憶があるんですか (2022年1月2日 18時) (レス) @page25 id: 2fabf89436 (このIDを非表示/違反報告)
rix @元荼毘(プロフ) - しらとぅさん» 影山飛雄です! (2020年11月27日 18時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
月華 - 更新停止残念です…復活するの楽しみに待ってます (2020年3月22日 2時) (レス) id: 05cb836c1e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rix@荼毘 | 作成日時:2020年2月29日 11時

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