Ep.44 ページ45
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『───せんせ、』
「・・・」
返事を、してくれない。
荒い息を繰り返してじっと私をみつめる先生は、まるで獲物を狙う猛獣。
血は頭から垂れ流してるし、どう考えたって普通の状態じゃあない。
『・・・血、止まんなくなってるから』
どう、どう。
両手を前に出して、宥める仕草。
・・・・・・猛獣相手にやるやつ。
ゆっくり近付いてきた先生は、やっぱり様子がおかしくて。
いわゆる、“興奮状態” ってやつ?
さすがに殺されはしないだろうけれども。
・・・さくらと諏訪ちゃん、教室に戻してよかった。
────ガタンッ
『──わ、ちょ・・・ッ』
とん、と私の肩を押した先生は、そのまま私を机に組み敷いた。
先生の額から流れる血が、私の頬に落ちる。
『・・・なに・・・ッん、』
“なにすんの” という言葉は、先生の唇に飲み込まれた。
『・・・ッんぅ・・・ッ!』
何度も何度も、角度を変えて重なる。
本当に、“喰われる”。そう思った。
『───・・・ッはァ、・・・!』
やっと離れた、唇。
先生は私をじっと見下ろした。
「・・・ッ、」
『───っひゃ、』
すとん。
力が抜けて、私の胸元に崩れ落ちてきた先生。
『ちょ、大丈夫・・・?』
返事がない。
そっと顔を覗き込めば、痛みに顔を歪めて気を失っていて。
いよいよやばい、と思った私は慌てて先生を壁にもたれて座らせ、机に置きっぱなしだった包帯やらをかき集めた。
『え、どうするんだっけ・・・!
心臓マッサージ、?人工呼吸・・・!?』
いや違う違う、落ち着け自分。
ブレザーとパーカーを脱いで、ペン立てにあったハサミでパーカーの袖を切る。
タオル代わりにそれで血を拭いて、水道で絞って傷を冷やした。
あとはガーゼをあてて包帯を巻くだけ。
・・・看護師さん、なれるかもしれない。
さすがにこの状態のまま放っておくわけにもいかないから、美術室の鍵を閉めて未だ目を覚まさない先生を膝枕。・・・これくらい許せ。
『・・・・・・死んでる、とかやめてね』
温かいからそれはないけども。
太ももに乗っかる重み。
動けないから、やることもなくて。
気付いたら、眠りに落ちていた。
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寿司 - 何度も見返しております。 そのくらい大好きです! (2019年1月19日 17時) (レス) id: 1641cbc119 (このIDを非表示/違反報告)
のに - 最高です。ストーリーめっちゃ好きです。 (2019年1月15日 19時) (レス) id: 7e4ee45a06 (このIDを非表示/違反報告)
オレンジ☆(プロフ) - ↓誤字がありました、すみません!これからも、楽しみにしています!です! (2019年1月15日 10時) (レス) id: ea2cee480d (このIDを非表示/違反報告)
オレンジ☆(プロフ) - はじめましてオレンジです!あなた様の作品を楽しく見ています!!頻繁に更新をしてくださりありがとうございます!これからも、楽しみにしていましています! (2019年1月15日 10時) (レス) id: ea2cee480d (このIDを非表示/違反報告)
地咲 - 好きです(真顔) (2019年1月15日 2時) (レス) id: f98b79cb93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しぃも | 作成日時:2019年1月7日 21時