8話 ページ9
シャオロンside
俺がこの世界に来てからもう20年ほどになる。この言い方でお察しの通り、前世─あの内ゲバだらけの軍人だった頃─の記憶は全てある。
茶髪に黄色の目。この容姿は前世と全く同じだった。だから、もしかしたら皆も……なんて思っていた。アイツらは強いから、噂がこんな田舎にも流れてくるだろうと。でもいくら待っても来なかった。これは、皆に会えないという事だろうか。前世でやっていたやんちゃのツケが回ってきたのかもしれない。目の前が真っ暗になった。
ある程度時間が経ったら、今まで以上に剣術を磨くようになった。前世のせいもあってか、剣よりもシャベルの方が体にあっていて、それで周りからは不思議がられたけど。
昨日もシャベルで獣を狩り、肉を家族と食べ、皮などを換金した。今日も同じ行為をしようとしていた。そんな時、懐かしい声で俺の名を呼ぶ人が現れた。
「シャオロン！！」
振り返ると、茶髪の濃い赤目と銀髪にぐるぐるメガネの2人がいた。
「……A、チーノ……？」
「そうだよ！ やっと会えたな！」
ニカッと笑うA。その隣のチーノは不思議そうな顔をしている。
「チーノ？ どうしたん？」
「えっと、シャオロン、やっけ？ なんで俺の名前を知っとるん……？」
その言葉に衝撃を受ける。Aを見ると曖昧に笑っていたため、きっと『記憶が無い』のだろう。
「……なんでやろうな？ やっぱ俺だからかな！」
とりあえず、彼の疑問におどけて答える。前世で、なんて信じないだろうから。
記憶が無いなら取り戻せばいい。取り戻せないなら全部話せばいい。
静かに決心をして、彼ら2人に向き合った。
「2人はこれからどうするん？」
「仲間集めの旅をやって、ギルドを結成するつもり！」
Aの発言は、ここ20年で1番輝いた言葉だった。
「なら俺も同行させてくれへんか？ アイツらとまた集まりたい」
「もちろん！ 行こう、シャオロン！」
差し伸べられた手を取り笑う。
ちゃんと親の許可もとり─食い気味で了承してくれた─新しい地へと駆け出した。
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