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双星の懸念 ページ22

別に大した理由じゃないですよ


そう言って本棚のひとつひとつの本を優しく触り整理する彼女の横顔も細い指もそのシルエットに至るまで本当に美しく神が意図的に作り上げた一つの美術品なのではと思う程


長い睫毛に縁取られた大きな双眸はいくつもの海を、又は幾重もの宙を閉じ込めたかのように複雑に碧が重ねられた宝石すら敵わない強く美しい輝きを持っている


まるで職人が作り上げた極上の絹糸かのように
細く艷めく白と青のグラデーションがある髪は彼女が歩を進める度にさらさらと風になびきとても幻想的である


『ただ、作者様が出したくないって思ったから出さなかった本を私が認めてもらってもいないのに読む訳にはいかないって思っただけです』


一年前言ったことと殆ど同じ理由ですけどね、と薄く笑う彼女は一年前とは違い余裕があるように見える


いつもは表情筋を動かさないがそれでも長くいればその中に表情を見つける事も容易くなる
意外とわかり易く本来は表情豊かな人物なのだろうということが伺える


それに、と綺麗な形の唇を動かして再び話し始め
ながら一つの本を手に取った


『誰かと本の感想を話し合えたりお互いの考察などを話し、聞くのもまた一興。楽しみなのです』


それが出来ないのは出来る喜びを知ってしまった私には少々物足りないもので、と自らの手にある本をこちらに差し出してくる


どうぞ、と言われて受け取るとぜひその本を読んでくださいと微笑まれる


『読み終わってもし面白かったら私のところに来てください、一緒に語りましょう』


目を細め口元を緩ませる彼女を見られるのも去年からしたら考えられない
もしかしたら彼女が少しは心を許してくれている証拠なのかもしれないな、と自分も微笑み返す


『その本、凄く面白いので私、自信ありますよ』


一体なんの自信だろう、と思いつつ、やはり本に関する事だからこんなにも表情豊かなのか?と少しばかり考えされられた


 

 
最初は王族だから繋がりを持てばいずれ、等という理由でアズールが考えて引き入れたのだが


存外肝が座っており中々の頑固さも持った彼女は簡単には折れない長い間大切に、時に荒く磨かれた剣のような鋭さがある


どんな過去があり経験をしてきたかは一切分からないが彼女の近くにいれば面白いことが起こるという事だけは分かるから


これからも手放さず、出来ることなら守りながら見ていたい、と思うのはきっと皆同じ事だろうな、と小さく溜息をついた


 

碧の正義→←碧の理由



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ぬか漬け(プロフ) - しゃけさん» 良かったです〜!安心しました笑 面白いだなんて言ってくださってもうすっごく嬉しいです!読んでくださって本当にありがとうございます!! (2020年7月27日 21時) (レス) id: 068881a9cc (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ(プロフ) - ぬか漬けさん» そうです〜!いえ、読みにくいとか気に入らないとか、そんなことではないので大丈夫です。お話としては面白いから好きですし、ただ単に、理由があるのかなあ…と疑問に感じただけです笑 (2020年7月27日 21時) (レス) id: 9cd1e2c3d2 (このIDを非表示/違反報告)
ぬか漬け(プロフ) - しゃけさん» 間の文章の最後に「。」をつけないという事でしょうか?それでしたら私のクセ、というのと文字数制限の関係でして、気にならせてしまって申し訳ないです。もし論点が違いましたらお知らせ下さい! (2020年7月27日 20時) (レス) id: 068881a9cc (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ(プロフ) - 間のナレーション?なんか第三者語り?みたいなやつに句点をつけないのだけが、本当にそこだけがすごく気になるw (2020年7月27日 20時) (レス) id: 9cd1e2c3d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あしな | 作成日時:2020年4月12日 20時

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