《完結》BorDer 終焉【ars S.S】 (ページ25)

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#Memory of the Night ページ25

あの日

一人で出掛けた私は、いつもの登山用リュックを背負って香是山に向かっていた。

香是山は全く危険な山なんかじゃなくて、私も何度か来たことのあるところだった。

事前にきちんとルートを調べ、ヘッドライトも点けてゆっくり登った。

何も
起こるはずじゃ無かった。

・

あれ、迷ったかな？

そう思ったのは、山に入って30分ほどした頃だった。
もしかしたら、さっき標識を読み間違えたかもしれないと。

香是山自体大きなものでは無かったから、私は特に焦ることもなくそのまま道を引き返した。

その途中のことだった。

月がよく照らしていてくれたおかげで、ライトを消しても十分に前が見えた。

頭に重いものを着けているのが嫌で、ライトを外して手に持って歩いていたら、木々の向こうに白い車が停まっているのが見えた。

こんな夜中に、一体誰の車だろう？

不思議に思ってそっちの方に近付いて行ったら、車から誰かが降りるような音が聞こえてきた。

何となく足音を消して、そっと忍び寄り

草むらの陰から、車の方を覗き込んだ。

そこで見たのは

車から降りてきた男の人がトランクを開ける姿

その中に入れられていた、縛られた女の人

男性が女性を抱き上げ、崖の縁に立たせて

縄を解き、躊躇なく突き落とした姿。

見てはいけないものを見てしまったと気付き、立ち上がって逃げようとしたら

側の草がリュックに引っ掛かり、ガサリと音を立てた。

男の人が歌いながらこっちを振り返って

光った目と、目が合って

リュックをその場に放り投げ、逃げ出した後は

……病院のベッドの上だった。