《完結》BorDer 終焉【ars S.S】 (ページ17)

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Ⅲ ページ17

おかしいと思った。

朝日を見るだけならもう帰ってきてもおかしくない時間なのに、電話しても彼女は出ない。

最初はまだ結婚を迷っているんだと思った。

方向音痴で、道にも迷っているのかもな、なんて。

昼になっても帰って来ないから、流石にマズいと思った。

嫌な予感ばかりが頭を巡り、拳を握り締めて聞いていた山に急いだ。

何時間も掛けて探し回って、見つけたのは……ズタズタになって目を覚まさないAの姿だった。

幸せを掴む、寸前だったのに。

その覚悟を決めた、はずだったのに。

明るい未来を心待ちにしていた、ところだったのに。

集中治療室の前で、何も考えられずボーっと座っている間に、俺の中からいろんなものが抜けて行った。

ストレッチャーに乗せられて病室に入って、夜が明けて、朝が来て、また夜になっても目を覚まさないAを見ている間に、俺は空っぽになった。

もう何もかもがどうでもいい気分だった。

Aの左手の薬指に嵌められた指輪を睨みながら……何で、俺は、あんな決断をしたんだろう。

何であんなに冷静に、医者や刑事に嘘がつけたんだろう。

何でAの婚約者を名乗ろうなんて……！

何度も後悔した。
何度も本当のことを言おうと思った。

だけど俺は、Aに甘えてた。

……俺の嘘に気付いているのに黙って笑っていてくれる、Aに。